魔女裁判殺人事件−8−




 ――さてはて。誰が何番なのか。残っているのはAとJOKERである。まあ、わかりにくいだヒントだ。かたや、日本では死神と連想されることが多いJOKERと、かたや日本では漠然とカッコいいイメージがついたエースである。二回目の回答で外した解答者たちに司会者はだまし切った奇術師たち――奇術師連盟の勝ちだと告げた。

「ちなみに、飯塚先生の娘であるRose Rougeさんはどっちがどっちかわかりますか?」

 鎌かけのためにばらしてしまったのだから仕方ないが、そういわれるのはあまり好きではない。

「といっても、二つが間違っているのなら、二人が逆だとしか言いようがないのでは……」

 私はそう言って二人を見る。

「まあ、日本において知識として知ってる方は少ないですが――海外の伝承や伝説ではスペードのAは死のカードとされていますから、死神の姿をした彼がA。色鮮やかで――パーカーの帽子が変わっているもう一人はおどけたようなマジックで道化師を連想させるのでJOKERではないでしょうか。ついでに言うなら」

 私はそう言って言葉を続ける。

「どちらかはビッグジュエルの下見にきた怪盗キッドでしょうけどね」

 ちょっとした意趣返しだ。私をだましたのだからこれくらいは許してほしいところである。涼しい顔をした快斗君に扮した高遠さんが、高遠さんに扮した快斗くんをみる。観客がワッと沸いた。高遠さんに扮した彼が、おっと、と口を開く。彼は自分の服に手をかけると――いつもの白い服装に変わる。そうして、私の手を取った。

「よくわかりましたね、お嬢さん」
「まぁ、途中まで騙されましたけどね。貴方から薔薇の花ではなくトランプが飛んできたので……スタッフがダメ元で貴方に頼んだのか、鈴木相談役の喧嘩を買って出たのかはわかりかねますが……」

 彼は肩をすくめる。そうして彼は言葉を続ける。

「お嬢さんは日本の魔女として名高かった近宮玲子のトリックノートをお持ちのようですね」

 その言葉に意味はあるのだろうか。

「幼馴染みだった魔法使いから送られてきました。まぁ、もしかしたらすぐに警察にまた預けることになるかもしれませんが……」

 キッドの言葉に私はそう返す。

「書いてある魔法を扱えるように、とその方に願われたもので……」

 私はそう言って目を伏せた。それが誰に、という話はしないが。彼はふっと笑う。しかし、言葉が何か続くかと思えば「今日は下見ですよ」と発行弾を使って消えた。光が消えたあと、キッドだけでなく高遠さんも消えている。はじめちゃんも周りを見渡したあたり、恐らくは彼もどちらが高遠さんかわかっていたのだろうか。きゃアキゃあと騒ぐ観客や芸能人達に怪盗キッドに持って行かれてしまいましたね、と私は真田さん達を見上げた。彼はため息をついて、「散々なデビュー戦だったな」とだけ告げた。
 カットがかかり、ヤマト達がやってくる。アキ、頭の上、と告げたヤマトに私は頭の上のトークハットを触る。なるほど、ビッグジュエルのついた小さな王冠に変わっているらしい。王冠は貴方にふさわしい、と書かれたキッドカードが丁寧に貼ってある。まあ、快斗君からすれば私に渡しておけば確認してくれるだろうということだろう。ベルくんがあたりを見渡して口を開く。

「jokerの人もいなくなってしまいましたね」
「まぁ、彼も本来ならいてはいけない人でしょうからね。怪盗キッドもそうですが、どうやってスカウトしたかわかりかねます」

 私の返答に、ヤマトがまさかと眉間に皺をよせる。はじめちゃんがやっぱり、と告げた。

「アレは高遠だったんだな」
「……恐らくは、だけどね。まぁ、自分にそっくりな方がいたのでワザとああいう変装をしていたのだと思いますが……どうしてこちらにいたかはわかりませんが……あの人の前で死ななくてよかった」

 私はそういって目を伏せる。はじめちゃんは、そうだな、と目を伏せた。


(奇術師達は嘘をつく――魔女裁判殺人事件 fin)