二人目の怪盗-4-
「金田一がそんなに驚くなんて、どんな感じだったんだ?」
快斗くんを簡単にさくらちゃんに紹介し終えると、快斗君がはじめちゃんにそう尋ねる。もうすっかり先ほどの下りで快斗くんと打ち解けたらしいはじめちゃんは「おさげで眼鏡のおとなしいやつだったんだよ!」と告げた。私もそれにはうなずいておく。中学時代の彼女はまさにおとなしい女の子で、どこか暗い印象があった。私たちの反応にさくらちゃんは困ったように笑ったけども。
「話を聞いたときやニュースで見た時は驚いたけど、本当に蒲生剛三の娘だったんだね」
「うん。五年前に失踪した父が本当の父親じゃないって聞かされていたんだけど、まさかこんなすごい人が『実の父』だったなんて数カ月前まで夢にも思わなかったわ」
さくらちゃんの言葉に快斗君が「全部あの絵のおかげってことか」ともう一度絵を見ながら告げる。しかし、さくらちゃんも蒲生剛三もよくお互いに気づいたな、と思いながら肖像画を見れば、肖像画の胸元にはあざがある。恐らく彼女にも似たようなアザがあるのかもしれない。まぁ、近くでお酒を飲んでいる男性が異を唱えたが。
「だが、あんたが本当に奴の娘だと決まったわけじゃない。剛三本人が言ってるにすぎん。口裏合わせで一芝居っていうこともある」
口裏合わせの一芝居。その可能性はないとはいいきれないが、彼女は財産を狙うような人ではないとは思う。いや、私のように二面性があるならわからないけれど。
剣持警部が小宮山さんに尋ねる。
「あの男は?」
「画家の吉良勘治郎様でございます。一時期はご主人様のライバルと言われたこともあったのですが、最近は絵を描かずにお酒ばかりのんでらっしゃるようでして」
小宮山さんのことばを聞いた吉良さんは眉間にしわを寄せてまたお酒を口に運ぶ。あまりああいう人は好きじゃない。もう一人、同じように疑問に思っている男性が近づいてきた。
「結婚もしていない剛三伯父さんに娘がいたなんて、甥の僕だって初耳ですから。ま、遺産目当てですり寄ってくる若い女も多いそうですし……さくらさんは顔もスタイルも抜群ですからね」
そう言った男性に、はじめちゃんがおこり、快斗くんが呆れたように「なあ、」と声をかけた。
「高校生にそんなこと言うなんて、あんたロリコンってやつ?」
「なっ」
その言葉にふふっと笑ってしまったのは仕方ない。大人っぽい彼女であるが、そう思うだなんて間違いない。
「あっ!」
小宮山さんがぶつかってワインをこぼす。イタリア製のスーツが! と叫ぶ彼に、小宮山さんは男性をさくらちゃんのそばから離れるように誘導した。そうして少し振り返ると小宮山さんはこちらに向かってウィンクをする。なるほど、わざとぶつかったらしい。スマートな人だ。そうこうしていると女性がやってきて、さくらちゃんに声をかける。
「あんな人の言うことを気にする必要はないわ。みんなあなたが羨ましいのよ」
「父の主治医をされてる海津先生です」
「どうぞごゆっくり」
そうにっこり笑った彼女はそのまま踵を返した。味方が多そうで安心した、と、ホッとしたはじめちゃんに本当にそうなのだろうかと考えてみる。彼女もモチーフの一つなのだ。危害がある可能性は十分にあった。庭に行こうと誘ってくれるさくらちゃんをみて、私は快斗くんにこそっと耳打ちする。
「どう思います?」
「まだなんとも。アキは?」
「何か嫌な感じがします。はじめちゃんがきているので余計に」
「……?」
「はじめちゃんはコナンくんのように首を突っ込むタイプではなく、事件がくっついてくるタイプですから」
その言葉に快斗くんは目をパチパチと瞬いた。なんだそれ、とは言うが、まぁそうとしか言いようがないのである。