二人目の怪盗-6-
盗まれた絵を埋めたと告げた和久田さんに警察が掘り起こすために連行した。警察に連行されていった和久田さんの他に席を外しているのは、はじめちゃん達一行、記者の女性――醍醐さんと蒲生剛三と海津さんだ。快斗くんははじめちゃんについて行った。まぁ残っている方を数えた方がはやいかもしれない。
「そういや、吉良さんも絵を描かれてるんですよね」
酒に溺れるようなタイプは苦手だが仕方ない。まぁな、とまた酒を呷った彼に私は口を開く。
「手を見せてもらっても?」
「? 手を見てなんになる」
「興味本位です」
そうにっこり笑いながらいえば、ふん、まぁいいと告げた吉良さんは手を見せてくれる。遠慮なく触れば、やはり筆を持つ際に当たる場所にタコができている。まだ硬い。
「吉良さんはどれくらい絵を描かれていませんか?」
「ああ?」
「喧嘩を売っているわけではないんです」
そう苦笑いをする。彼はなんの関係がある? と言って酒を呷った。
「そう言えば、お嬢さんは先程職は手に出ると言っていたね」
画商の羽沢さんがそう告げる。さすが画商、英語フランス語あたりは簡単に理解するんだろう。
「いえ、幼馴染みから聞いた話を確かめたかっただけです。私の幼馴染みに奇術師がいたんですが、彼は細やかな細工を必要とするので指が細いんですよ。奇術師に向く手だから奇術師になったのか、違うのかはわかりかねますが……だから、画家や作家はやはりペンだこがあるのかと思いまして」
そう言えば吉良さんは当たり前だろうとまた酒を呷った、が、私の言動の意味がわかったのか、急に協力しようと思ったのか口を開く。
「最後に描いたのは発表はしていないが半月前だ」
「なるほど。だからまだタコが硬いわけですね」
そう言ってフムと考える。快斗くんがペンだこの形跡はあるがもう柔らかくなっていた、と小さく言っていた。ということはやはり彼が描いたのではない可能性が高い。なら、何故彼は絵を発表できたのか。
――誰かの絵を買い付けた?
執事の小宮山さんはこうも言った。彼は絵を描くことをやめたからアトリエ周辺を解放したのであって、その前は引きこもってかいていた、と。買い付けたのであれば業者が出入りするはずであるし、それを誰かは目撃するはずなのだ。
――ゴーストペインターがいた?
何もあり得ない話ではない。ゴーストペインターというものは確かに存在する。もっとも有名なのがビッグアイズという映画にもなったキーン夫妻である。彼らの場合、夫婦という関係だから特に怪しまれずに公表できていたようだが。
吉良さんはゴーストペインターがいると最初から言っている。
「吉良先生は、蒲生先生が描いた絵ではないと言っていましたが、何か根拠があって?」
「あいつはすぐモチーフや構図を真似る。俺のものも真似やがった。そんな奴があんな素晴らしい絵を描けるはずがない」
「私もそこまで絵画に詳しいわけではないのですが、つい先日、蒲生先生が初期に描かれた絵を拝見しました。確かにこちらに展示されているものとは画風が違いますね。今の方が好きです」
「ええ、蒲生先生の画風は五年前に今の画風に変わっています。高く評価されたのも五年前からですね」
羽沢さんがそう告げる。
五年前。他にも五年前というワードがあったはずだ。快斗くんがはじめちゃんと一緒に駆けこんでくる。
「アキ! 怪盗紳士が現れた」
「どちらですか?」
「跳ねてる方!」
なるほど、本物。そう思いながら行きます、と返事をし二人にお礼を告げて私ははじめちゃん達に合流した。