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12時の鐘がなる




 第一の殺害現場――山ノ内さんの殺害現場につく前に、千代さんに違う花瓶に水を入れるように渡します。火祀先輩に奥に行くように言えばご丁寧に火祀先輩は屋上へ向かい、私たちは現場に入りました。

「さて、ここが山ノ内さんの殺害現場です。奥の扉はグラスタワーで塞がれ、出入りは手前の扉しかできない――ように見えます。あの時、私は金森さんという女性スタッフにここに来るように言われました」
「証言の裏はさっきとった。金森さんは蘭堂さんに山ノ内さんが近宮を呼んでいると言われた、と言ってた」

そう告げた野崎くんに頷きます。その時、火祀先輩が奥の扉から現れました。

「あの扉の奥は屋上に繋がる階段だそうです。屋上を経由し、廊下にあった階段に出ることができます。そして、見ての通り外開き。内開きではありません」
「内開きでなくても、出入りは無理じゃない? グラスタワーを乗り越えても動かしても崩れてしまうわ」

吉岡さんの言葉に首を振ります。

「固定してしまえばいいんですよ」
「固定? どうやって」
「遥さん持ってきたよ!」

そう千代さんが水の入った花瓶を持ってきました。ありがとうございます、と告げてから受け取ります。

「水の重さで固定するってこと?」
「いえ、これを使います」

スルリと先ほどとった水筒を取り出します。

「水筒?」
「こちらはよく、マジックに使われるものです。蘭堂さんは華やかな脱出マジックが得意。彼女がこれを持っていてもおかしくありません」

 そのまま二つを火祀先輩に渡します。先に一番上のグラスは拝借いたしましょう。火祀先輩はその二つを一緒にグラスタワーの上から流しました。
 ピキリ、ピキリと音を立てて凍りついたグラスタワーに、明智警視が口を開きます。

「なるほど、液体窒素ですか」
「はい、これでグラスタワーは固定されます。このように激しく動かしても、崩れません」

 グラスタワーを扉の前から退かします。グラスタワーはビクともしません。

「でも、氷や水が溜まってわかるんじゃ……」
「ああ、それなら、この布の下はこのように――水槽があります。」

 グラスタワーの、正しく言えば、飾り布をめくります。下には水槽です。

「そして、グラスの一つ一つに実は穴が空いているんですよ」
 
先ほどとった一番上のグラスの底を見せます。グラスの底には小さな穴がありました。
 
「穴は小さいので簡単に塞がれますが、解けて仕舞えば全て流れ出し、水槽に落ちます」
「ああ! そういえば、蘭堂さんの前座のマジックにそんなのがあった!」

 ポン! と手を叩いたスクワードさんに言葉を続けます。

「おそらく彼女はリハーサルを誰にも見られたくないから、と山ノ内さんを誘導したんでしょう。誰にも見られたくなくても、プロデューサーには見せなければいけませんから」
「水はどうしたんですか?」
「さて、みなさん、どうして花瓶だけ転がっていることに疑問を持たないんですか? この部屋のゴミ箱には生花が入っていたというのに」
「ああ、花瓶の水か!」
「花を捨てて、花瓶の水で凍らせてそれで殴った、ってことか」

 野崎くんの言葉に頷きます。

「そして、グラスタワーを動かして逃げた」

  私の言葉にあわせて火祀先輩がグラスタワーをまた動かしました。それは扉の前へ。そして先輩は扉を閉めました。

「おそらく監視カメラを洗えば何かわかるでしょう。ま、ここからは警察の仕事ですかね」

 扉が再び開いたため、火祀先輩が入れるようにグラスタワーを動かします。

「しかし、一つ一つが雑になってしまっているのが残念でしたね」

 そう告げてまた目線を周りに向けます。

「恐らく、ワザとそういう風に仕向ているんでしょう。最初に私が疑われなくても、容疑者が発覚してから次々と死ねば、私を疑うしかなくなる。そして、私が消えれば間違いなく事件は手詰まりです」
「それは、どういう意味?」

  そう告げたのは千代さんです。彼女の言葉に肩をすくめます。

「ま、裏方にいる方は私が誰かに連れさらわれることも、明智警視が来ることも、予想外だったんでしょうね」

 そのまま火祀先輩を見ます。火祀先輩が睨んでいる相手に的確だなぁ、と思うわけで。その人物に近づきます。

「さて、自白していただきましょうか、死神マジシャン、いえ、霧島純平!」



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