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呪いをかけた死神は



「さて、自白していただきましょうか、死神マジシャン、いえ、霧島純平!」

 そう告げて先輩が睨んでいた人物――千葉大翔の顔に手をかけ引き剥がします。正しくは、マスクを、ですが。ビリっと破れる音がして、素顔が現れました。そこにいたのは間違いなく霧島純平です。

「なんでわかったんだ?」
「まぁ、一番の理由は火祀先輩が貴方に警戒してたからですかね」

 後は学校も彼が昔通っていたはずの学校だとかいうメタな理由などもありますが。

「はは! 変な理由! でも近づいたのはダメだったな!」

 そう笑った彼は何か――ナイフを取り出し、それを私に振りかざしました。人間というのはどうしてか、自分の危機的状況には目をつぶってしまうらしいです。そして、私もそうでした。

「近宮!!」
「遥!」
「遥さん!」

  そんな叫びを余所に、ドン、と体が押されます。そして、うわ、という霧島の声も。目を見開くと、目の前にいたのは遙一兄さんで、高宮さんが霧島を捕まえていました。チラリ、とこちらを向いたのは遙一兄さんは口を開きます。顔から血が引くのがわかります。兄にはナイフが刺さっていました。

「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃ、ないです、」

 そう首を振りますが、遙一兄さんは私を見て息を吐くと私を抱え込みました。そういう意味ではありません。

「なんなんだよ、高遠! 邪魔すんなよ! つーか、高宮はいい加減にしろよ!!」
「遥に手を出すことも頂けないけど、弟に手を出すの頂けないな」

 淡々と告げた高宮も同じくマスクを外します。

「一緒に捕まろうか? 死神くん」
「はぁ? 俺は捕まらねぇよ! もう書類上は死んでるんだからな!」
「なら、殺してあげよう。君は目障りすぎる。僕にとっても、遙一にとっても、遥にとっても、ね」

 スルリとダーツを取り出した高宮さんに明智警視が止めに入ります。

「待ちなさい。高宮一葉。霧島純平、貴方は捕まえることが可能ですよ」

 そう告げた明智警視は逮捕状を取り出しました。

「火祀くんの協力で、貴方が死んでいないことが証明されました。逮捕状の請求は終わっています。幾多の殺人罪、殺人教唆の罪で逮捕します」
「へぇ、そういうこと」

 そう口を開いた霧島は、「ツメが甘いぜ? 高宮一葉」と言葉を吐きました。そして、その瞬間、バチリ! という音が響き、一葉兄さんがうずくまります。そして、そのまま霧島純平は近くにいた堀先輩をつかみました。そして、首元にナイフを当てます。

「おっと、動くなよ。コイツが死んじゃうぜ」
「うわっ!?」
「堀先輩!?」

 その光景を見て、何かがプツンと音を立てて切れた気がしました。例えるなら、そう、マリオネットの糸が切れたような。
 遙一兄さんはだんだん顔が険しくなってきます。一葉兄さんは恐らくスタンガンをくらったのでしょう。痛みでしばらくは動けない。堀先輩を盾にされては、明智警視も動けません。
 するり、と、兄の拘束から抜け出します。

「ん? なになに? 遥ちゃん? 俺になんかよう?」

 そう告げた彼に、手が動いたのは無意識でした。手元に並んだ薔薇、いえ、薔薇ではありませんでした。薔薇に見せかけたモノです。しかし、周りには薔薇に見えるでしょう。
口元に笑みを浮かべます。できるだけ、綺麗な笑みを。

「貴方はどれだけ愚かなんでしょうか」
「愚かだって?」
「貴方は馬鹿だ。私のマジシャンとしての誇りだけでなく、大切なものに手をかけた……貴方だけは許さない」

 薔薇の花を投げようとした瞬間でした。「近宮! 待て!」と叫んだ堀先輩と、私の手を引いた遙一兄さんにょって動きは止まります。その一瞬に、高宮さんが霧島に何かを投げました。私に注意が向いていたからでしょう。霧島の肩に綺麗に刺さったそれ。霧島は目を見開いて、その間に明智警視が堀先輩を引き離します。

「午後3時40分、霧島純平、逮捕します」

 そう告げた明智警視は霧島純平に手錠をはめました。その瞬間、がくん、と落ちた霧島に明智警視が一葉兄さんを見ます。警察の刑事の方は霧島を連行していくのが見えました。

「ただの強力な睡眠薬だ、遥の友人の前で人を殺す気にはなれないからね。さて、そろそろ僕もお暇しよう」

 そう肩をすくめた一葉兄さんは、指を鳴らします。その瞬間、カタン! という音、眩しいばかりの光が溢れます。ポン、と頭が撫でられる感覚がして、また後で、と耳元で囁かれました。光が消えると一葉兄さんはもういません。窓から何処かへ逃げたんでしょう。
 あっけにとられた部屋に、私は遙一兄さんを見ます。遙一兄さんは私を見下ろしました。



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