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東の魔法使いの呪文
「高遠、救急車を手配します」
「その必要はありませんよ」
明智警視の言葉に、遙一兄さんは肩をすくめます。そしてそのまま傷口から手を離しました。溢れたのは薔薇の花弁です。そして、手の裾からは霧島純平が持っていたナイフが出てきました。それにきょとん、とする周り、火祀先輩だけが顔を青くしたのは、恐らく彼のトラウマの話でしょう。
「遙一、兄さん、」
「はい、なんでしょう」
唖然としたまま彼を見上げます。彼は恐らくそのままそのナイフで霧島を殺す気だったに違いありません。
「……遙一兄さんの、馬鹿!」
そう叫んでしまったのはきっと仕方ありません。周りがびっくりしたように私を見ました。
「あんなことした私も馬鹿ですが、遙一兄さんも馬鹿だ!」
「ひどい言い草だ」
「なんで庇って、というか、なんで殺そうとしてるの! 私の周りを殺人者だらけにしたいんですか?! 馬鹿!」
「それは私からもいえますね」
まぁ、貴方が犯罪を犯せば嬉々と一葉が連れて行くでしょうが。
ポツリと呟いた遙一兄さんは私の頭を撫でました。
「遥は決して一人にならないよ、どっちに転んでも、ね」
「兄さんの、馬鹿、約束したのに、」
「そうだね」
そのまま私をまた抱え込んだ彼はチラリと何処かを見ました。
「まぁ、僕の行動より堀くんの言葉に反応したようだけど」
兄の言葉に固まります。そのまま固まります。そういえば。
ゆっくり兄を押せば、野崎くんがメモを取っているのが見えました。そのまま素早く離れます。そして、いつものように平静を装って彼らを見ました。
「……忘れてください」
「遥さん、それ、無理な注文だと思うよ」
「殴れば消えますかね。物は燃やせば消えますし……」
「イヤ、だめだろ」
「堀先輩は大丈夫ですか?」
「おー、びっくりしただけだから大丈夫だ」
そういった堀先輩にほっと息を吐きます。何はともあれ、一件落着、でしょうか。千代さんが眉尻を下げます。
「でも、散々な門出になっちゃったね」
「ま!日を改めればいいですし、卒業してからでいいでしょう」
「おや、では、皆さんを前に披露しては?」
そう告げた兄をきょとんと見上げます。
「せっかくリハーサルしたんだから、ね」
優しく笑った遙一兄さんにため息を付きます。
「しかたありません、やりましょう」
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