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東の魔法使いと烏と、




 ――やはり、あの子には華やかな場所が似合うのだ。
 高遠は舞台の袖でマジックを披露する近宮遥をみる。周りの視線は彼女に釘付けである。ふわりと舞ったバラの花に周りは歓声を上げた。マジックを見る側も、する側も嬉しそうに笑うその姿はとても眩しいものがある。

「戻ってきたんですか」

 そう静かに高遠は口を開く。後ろから現れたのは高宮一葉だ。ばれていたのか、とわざとらしく肩をすくめてみせた高宮は高遠の隣に並び同じく舞台の方を見つめた。

「やっぱり、遥は光が当たる場所が似合う」
「ええ、そうですね。それに比べ、私たちは闇でしょう」

 高遠と高宮はとても似ている。それは、恐らく生い立ちも関係しているだろう。いや、恐らくは本質は兄妹全員が同じであるが、育った過程が違うから生じた差だ。今回、高遠は勿論霧島が後ろにいることをなんとなくわかっていた。度々事件に巻き込まれたからこそのそれだろうし、恐らく霧島の狙いは同級生であった高遠だったのである。高遠を犯罪者にしたいがために、霧島は近宮遥を執拗に狙っていた。だから――今回、高遠はけりをつけるつもりでいたのである。「正当防衛」が成立するように。そう、高遠は霧島を殺す気でいた。

「霧島は?」
「僕がこの前いた拘置所にいるよ。彼には脱出はできない」
「どうしてそう言えるんです?」
「かんたんなことだ、彼は拘置所を脱出したことがない。むしろ、捕まった経験もない。が、あの拘置所は『僕』という前例がある。これで逃げ出したら警察は『本当の無能』ということになる……と、言っても、遙一は安心しないだろうね」
「ええ、そうですね」
「――まぁ、脱走すれば僕が殺すよ」

 さらり、とさも当然のように高宮が言う。高遠はそこでやっと高宮をみた。

「君は手を汚さない方がいい」
「何故?」
「何故だって? 君は遥の保護者なんだ。僕とは違う。君はまだ手を汚していないが、僕はもう汚れている。それに――」
「それに?」
「――君も『弟』だ」

 かるく、ぽん、と頭に手を載せた高宮に、高遠が唖然とする。少し笑みを浮かべた高宮は近宮遥を見た。

「遥を頼んだよ、遙一」
「……会っていかないんですか?」
「今はよしておく。ああ、それと」
「なんですか」
「君もスポットライトの中がお似合いだ」

 そういって高宮はその場を後にする。高遠がそれを見送ると、拍手の音が聞こえた。舞台を見れば、近宮遥が一礼をしている。どうやら無事にマジックは終わったらしい。お疲れ様、と声をかけようかと思ったが、友人たちが興奮気味に取り囲んだのでやめる。目があった近宮は困ったように、でも、嬉しそうに笑った。



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