106
呪いとともに解けた魔法



「――あの二人に関しては、以上です」

 休み時間、明智警視から頂いた事をこの前巻き込まれたメンバーに説明します。動機、と呼ばれるそれでしょうか。それぞれ、実は関わりがあったらしいです。例えば、山ノ内さんは蘭堂さんの元カレだった、だとか、蘭堂さんは花森さんに遊ばれた、だとかそういうことです。

「うぇー、山ノ内さんの動機以外、そんなことで? って言う感じだなぁ」

 そう率直に感想を述べた遊さんに「ニュースでよく見る殺人も、稀に犬がうるさかったから、というそれもありますし」と付け加えておきます。

「まぁ、花森さんは自尊心が高い方ですから遊ばれてトリックを持って行かれたことに怒っていたんでしょう」
「蘭堂さんは?」
「彼女達の別れた時期と彼女の不調の時期が重なります。そういうことです」
「たまったもんじゃねぇな」
「まぁ、推測でしかありませんけどね」

 肩をすくめてみせた私に、火祀先輩が口を開きました。

「山ノ内さんは?」
「山ノ内さんは、彼の母親が花森さんの前の付き人だったみたいですよ」
「え? じゃあ、なおさらなんで?」
「今の付き人さん曰く、花森さんが彼女に手を出したそうです。その後、山ノ内さんの父親に浮気を疑われて離婚、後に自殺をされています」

 資料に目を通しながら答えます。あからさまに全員顔をしかめました。

「屑だな、花森」
「花森さん、屑だな」
「最低じゃん」
「最悪だな」
「うわぁ」
「でも殺していい理由じゃないよ」
「千代さんの言うとおりですね」

 彼女の理論は正しいですが、まぁ、とりあえず最悪ということでしょう。おそらく、母が彼を気にしていた理由はコレなんでしょう。母はこのことを知っていた。推測でしかありませんが。

「本物の千葉とかいうやつは?」

 御子柴くんの言葉に、資料を目に通してコレを素直に答えるかどうか迷います。しかし、彼らも関わった以上知る権利はあるかもしれません。

「本物の千葉さんは殺されているようです。彼のPCからは自殺願望が合ったことがうかがえた、と書かれているのでそういうことでしょう。遺体はまだ見つかっていません」
「うわ、めちゃくちゃぞっとした」
「でしょうね。そろそろこの話題は終わりましょうか」

 そう言って肩をすくめます。

「でも、よかった」
「何がですか?」
「あの時の遥さん、なんか怖かったから」

 眉尻を下げた千代さんに、はて、と首を傾げました。野崎くんが「近宮がキレていたときか」といってくれたため、ああ、と納得します。

「あの時、初めて小説などの一説がわかりました」
「どういう意味?」
「よく、小説とかであるでしょう? プツンって音がするって」
「マジギレかよ」
「ええ、マジギレですね。堀先輩の制止がなければ、衝動的に動いて、今、貴方達の前に私はいなかったかもしれません」

 私の言葉に、その場にいた6人は顔を見合わせました。そう、恐らくは制止されなければ、私は霧島を殺していたでしょう。そして、そうなっていれば私はここにいません。そもそも、眼の前にいる彼らとの関わりはもう途切れていたでしょう。
 しかし、現実は、堀先輩が止めてくれました。

「ありがとうございます、堀先輩」

 そう笑んでおきます。堀先輩は目を見開きました。そして、皆を見ます。彼らがいたことも、恐らくは私にとって大きく影響しているのでしょう。いえ、彼らだけではありません。そこには兄達や明智警視も含まれます。もし、彼らが私を疑っていれば今の私は恐らくいない。

「みんなも、ありがとう」

 その言葉に、一番に動いたのは遊さんでした。抱きついてきた彼女に苦笑いをします。すると、遊さんがムッとしました。

「遥、さっきの笑顔で笑って」
「こうですか?」
「違う! それに敬語!」

 指摘されたそれに思わず苦笑いをします。こうなってしまえば、仕方ありません。

「これでいいのかな? 遊さん」
「やっと、敬語外れた!!」

 そう抱きついてきた遊さんにもう一度苦笑いしました。癖なんですってば。
 


PREV BACK NEXT