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先入観とは偉大なんです


旭川を過ぎれば、人はだいぶ少なくなります。みんなで集まれる場所がないため、食堂車にて話をします。たわいもないことを話していれば、マネージャーさんがやってきました。休憩中、なのかもしれません。

「遥ちゃん、だよね」

そう尋ねた彼に、周りは私を見ます。

「知り合い?」

そう尋ねた千代さんに、彼はもう一度私を見ます。
「どうして此処に?」
「……貴方が私を呼んだのでは?」

 そう返すと、彼はきょとんと私を見ました。そして、緩やかに首を振ります。

「だって、君が嫌がるから……」

 そう答えた彼に私は彼をじっと見ます。演技なのか、はたまた素の表情なのかはわかりません。

「でも、君にまた会えて嬉しいな」
もう会えないかと思った。

 ふにゃり、と笑った彼に、この前会ったでしょう、と言いかけて止める。彼は由良間に呼ばれて左手で扉を開けて去って行きました。そういえば、と思います。彼は左利きですが、前に来た彼は右利きでした。誰かが変装していたようです。そこで、周りがニヤニヤと笑っていることがわかりました。

「知り合いか」
「えぇ、まぁ、はい。幼馴染のような感じというか、兄というか」

 私の返答に、周りが余計にニヤニヤしていました。食堂車に他に人はいません。がらりとまた扉が開き、兄と金田一くん、七瀬さん、佐木くんがやってきました。

「ち……じゃないな、高遠は隣と被るな……」
「遥と呼んでください」
「んじゃあ、遥……チャン」

 慌ててチャンをつけた金田一くんに兄を見ます。兄は私を見てにこやかに笑いました。

「いやぁ、改めて見るとイケメンぞろいですね」

 佐木くんはそう言ってカメラをこちらに向けます。兄が口を開きました。

「鹿島さんは女性でしょう?」

 兄の言葉に美雪さんと金田一くんがえ?と首をかしげました。

「え? お兄さん、なんでわかったんですか?」
「手の骨格が女性ですし」

 そのあと、遊さんに謝った美雪さんを遊さんが口説き、美雪さんが赤面したのは仕方がありません。

「七瀬……」
「どうかしましたか?」
「いや、どっかで聞いたことあると思ったんだが、もしかして七瀬は不動高校の演劇部か?」
「え! 本当!?」

 そこから演劇部トークに移った三人を他所に、私は金田一くんと兄を見ます。

「千代さん、御子柴くんの耳を塞いでください」
「はぁ!?なんでだよ」
「グロテスクな話になるかもしれませんよ。いいんですか?」

 私の言葉にコクコクと頷いた御子柴くんに、息を吐き、兄と金田一くんをもう一度見ます。

「山神さんが殺されたんですね」
「――ええ」

 私と兄のやり取りに、演劇部トークをしていた二人も周りにいた三人も固まりました。そこから兄は淡々と現場の状況を告げ、死体が消えたといいました。

「遥、思いつくことはありませんか?」

 そう告げた兄に、思考を巡らしますが浮かびません。首を振ります。


「ただ、わかったことがあります」
「わかったこと?」
「この前、私に会いに来たマネージャーは違う方でした。正しくはマネージャーに変装した別人でしょう」
「あ!さっきの人、既視感あるなと思ったら遥に会いに来た人か」
「どうしてそう思うのか聞いていいかな?」
「正しくは、彼ではない可能性が高い、ですかね。彼は左利きです。しかし、この前会いに来た方は右利きでしたから。それに、チケットを私に送ってきたのは彼ではないようです」

 野崎くんが何かをサラサラとかいていました。千代さんがちらりと見ると、相変わらずだね、野崎くんとつぶやいています。美雪さんがそれを見て野崎くんを凝視しました。ちょっと気になります。

「――遥、率直に聞きますが、彼はあの事件の前からマネージャーだったのですね?」
「はい」
「彼はあの事の真相を知っていますか?」
「――おそらく知らないでしょう」

 私の言葉に、兄と金田一くんは思案し、兄が口を開きます。

「金田一くん、先入観にとらわれず最初からやり直しましょう。おそらく犯人は彼ではない」
「ああ」

 二人の会話には突っ込まない事にします。七瀬さんと佐木くんは首をかしげました。窓際の席でああやらこうやら言い合う二人に明智警視と剣持警部が加わります。私は周りの会話に加わります。そのあとは野崎くんと御子柴くんの「幼馴染は付き合うものじゃないのか?」という質問が七瀬さんを困らせた、とだけ言っておきましょうか



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