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そのフラグは折れませんでした



 彼の言葉に、兄も私もたじろぐのがわかりました。目を少し見開きます。トリックノートを独り占め、と思ったのですが、違うようです。由良間は語ります。
 あの日、左近寺が細工をしたことを。彼らの狙いは母だけでなく、私もだったとか。そういえば、とあやふやな思い出を思い出します。あの時、由良間はいなかったのかもしれません。
 彼は桜庭含む四人が劇場からでてきたのを見てマネージャーと不思議に思い、劇場に足を踏み入れました。そこで見たのが、私が母の手を持ち、また、腕一本でぶら下がっている姿でした。
 その言葉に、記憶がだんだんとはっきりしてきます。あの時、誰が確かに私の名をよんだのです。遥、と。それは由良間かマネージャーのどちらかだったのでしょう。
 なので、私は叫びました。誰か助けて、と。
 それを聞いたマネージャーと由良間は私を助けに上がりました。しかし、時遅く、私は耐えられずに落下しました。母が命を落とし、私は意識不明の重体になりました。逆に言えば、私が助かったのは2人が早急に救急車を要請したからなのです。

 警察が事故と判断したため、2人は独自で調査をしました。由良間は真相を突き止め、四人につめよりましたが、四人は事故だと譲らず、そして、左近寺が言い放ったのです。

――細工したとしても、偶々2人がそこを踏んで落ちただけでしょう?

 マジシャンというものに、偶々はありません。あるのはマジシャンズセレクト。自分の思い通りに、人を誘導する。カードマジックが得意な左近寺ならばできることです。
 そこで由良間は言葉を止めて、私を見ました。

「君に見せる気は無かった」
「……ばれていたんですか」
「君の癖ですぐにわかっただけだ」

 彼の言葉に、私は眼鏡とマスクを外しました。桜庭が私を見て、あ、あ、と声をあげたのがわかります。自分が殺されるとでもおもっているのでしょうか。おかしな奴です。

 しかし、その場に、あーあ、とつまらなそうな声が聞こえました。言葉を発したのはさとみです。


「つまんねーの。犯人ばれちまったし。お前、もう死んでいいよ」

 そう告げてから一瞬でした。彼女は由良間に何かを投げると、由良間にそれは刺さり彼は呻いて倒れました。私は由良間に駆けつけました。金田一くんはさとみを目を見開いてみます。

「さとみさん!?」
「……貴方は、霧島ですね」
「久しぶりだなー!高遠!」

 そう無邪気に告げた彼女は、べりっと変装を外しました。

「遥にチケットを送りつけたのも、犯行予告を送ったのも貴方ですね」
「高遠の妹を見てみたかったんだよなぁ」
「――理由は言わなくて結構」
「理由?決まってるだろ?」

 霧島がまた何か――ダーツの矢を取り出しました。会話が噛み合っていません。

「お前の妹、邪魔だから殺そうと思って」

 私に向かって飛んできたそれに、堀先輩と遊さんが反応しました。遊さんが私をかばい、堀先輩がマジック用具からオモチャの剣を引き抜くとそれを弾きました。流石というか、なんというか。
 それに顔をしかめた霧島に、兄と明智警視が狙います。しかし、彼は何か発光弾のようなものを落とし、消えました。
 光が消え、兄が窓から下を見下ろすと霧島の声が聞こえます。

「またな、高遠!」

 兄が舌打ちをしました。そんな中、私は由良間に目を落とします。息も絶え絶えです。彼をなんとかしないと、と思いますが、できません。彼は私のほおを触れました。
「――――、――――――」

 彼が口を微かに動かします。言葉は聞こえません。緩やかに彼の腕が下に落ちます。
 そして、彼は動かなくなりました。それは彼の死を意味しています。ぽたり、と彼の顔に何かが落ちました。それが何かわからないほど、私は馬鹿ではありません。

「殺す必要なんで、無かったのに」

 それは、「貴方が殺す必要」なのか「彼らを殺す必要」なのか。私にはわかりませんでした。



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