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転校はお約束です



「転入してきました、近宮遥です。微妙な時期ですがよろしくお願いします」

 そう言って礼をします。パラパラと起こった拍手を聞き流し、先生は「近宮さんは鹿島の隣な」と私に声を賭けました。鹿島、という声に反応し手を挙げた男子生徒の隣――窓側の席に移動し、よろしく、といいます。所謂イケメンと言われる部類です。彼はキラッキラッとした笑顔とともにこちらこそ、という返答をしてくれました。とりあえず、席に座って窓の外を見上ます。白い月が出ていました。



 私が目覚めてから半年が経ち、また、私が退院してから2ヶ月がたちました。やっとの事で元に戻った体は、まだどこかぎこちないような気もします。まぁ、私が生活に慣れようとしている間に、兄さんが私の転入手続きを進めてくれていたらしいです。学費、といえば、そんなことは気にしないでいいと言われました。彼は有名なマジシャンですし大人だからでしょうか。しかし、少し気が引けます。秀英でも良かったですが、それは兄がダメだと頑固拒否した為、家から比較的近い浪漫学園に入学することになりました。

 ふと、自分に向けられた視線に隣の席の鹿島くんとやらを見て首を傾げます。鹿島くんは相変わらずキラッキラッとした笑顔で私の手を取りました。その手をみれば、どうやら彼が男の子ではなく彼女即ち女の子であるとわかりました。ふむ。鹿島くんは失礼だったようです。

「麗しのお姫様。困ったことがあればこの私になんなりと申しつけください。私は君の王子様でありたい」

 そんなことを告げた彼女をきょとんと見つめます。周りの女の子はきゃあと声をあげ、周りの男の子は勇者だと言わんばかりの視線を向けています。もう一度、彼女を見れば首をかしげていました。周りもザワザワし始めたので、どうしたものかと考えます。彼女の演技に乗ればいいんでしょうか。とりあえず、乗ってみましょう。私は彼の手をとりました。

「いえ、王子。私はお姫様などではありませんよ。私はしがない」
 ―― 魔法使いです。

 そう言って薔薇の花を出します。マジックの基本中の基本です。目を瞬いた彼の手をするりと放しました。これでも私はプロのマジシャンだったわけですから、負けちゃだめだろう、という無駄な抵抗心も含まれます。鹿島さんは目を輝かしてガシッと私の手を取りました。

「今の何!?」
「魔法、ですかね」
「すごい!堀ちゃん先輩に見せたい!! 近宮さん何者!? 魔法使い!!?」
「さぁ、何者でしょう」
「先生! 堀ちゃん先輩に見せてきていいですか!」
「だめに決まってるだろ、鹿島。近宮が困ってるんだから手を離してあげなさい」
「えー、」

 そう不満げに告げた彼女の手からするりと抜け出しニコリと笑っておきます。彼女が犬に見えたのは仕方がないと思いたいです。



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