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王子様の勧誘は辞退します



 学園の王子様と呼ばれる鹿島さんから逃げ出し帰路につくのが習慣化し、また、御子柴くんという外面と内面がかみ合わない一般的にはカッコイイと言われるであろう男子生徒と仲良くなりました、まる。
 日本国内の何処かに出張中の兄さんから来た近況を尋ねるメールにそう返します。制服姿を見たい、という彼はシスコンかもしれません。……それ以上考えるのは辞めましょう。
 今日はどうやって鹿島さんから逃げようかと思いながら廊下を歩きます。「あ、遥!」という声にそちらを向きました。鹿島さんと女の子、男の子二人、御子柴くんがいます。こう見ると女の子はまるでハーレムだなぁ、と思いながら、手だけ振って帰ろうと足を踏み出しました。やってきた御子柴くんに腕を掴まれるという形で確保されましたが。

「もー! なんで逃げるの!遥!」
「いえ、貴方と関わると主に女性関係が抉れる気がして。あと、堀ちゃん先輩コールに飽きました」
「そんな理由だったの!?」

 するりと御子柴くんの拘束から抜け出して、鹿島さんと御子柴くんのお友達ですか?と首を傾げてみます。我ながらあざといと思います。

「そ。隣の可愛いのが千代ちゃん。その隣の部愛想なのが野崎。で、この小さいのが、堀ちゃん先ぱっ」

 鹿島さんの鳩尾に堀ちゃん先輩とやらのグーパンが決まりました。綺麗に決まったな、と見たあと、鹿島さんをスルーし一礼します。

「近宮遥と言います。数日前に転校してきました」
「ああ! 噂の魔法使いさん!」

 何か納得したようにポンッと手を叩いた千代さんに、首を傾げます。どうやら、「みこりん」こと御子柴くんから教えてもらったらしいです。みこりん……という視線を向ければ、なんだよ! と言われた為、なんでもないと首を振ります。案外似合ってるとは言わないほうが良さそうです。
 そして、そのまま堀ちゃん先輩と呼ばれた男の子に目を向けました。私より少し小さいですが、私が女子としては高い方なので気にしません。

「堀ちゃん先輩ということは、貴方が噂の堀先輩ですか」
「俺が噂?」
「ええ、鹿島さんから実は少女趣味だという話を……」
「かしまぁぁぁぁ!!」
「……なるほど、鹿島さんのジョークでしたか。これは失礼」

 ポンッと手を叩き、綺麗に首を絞められている鹿島さんと堀先輩から目をそらし、千代さんと野崎くんに目線を移します。

「賑やかですね」
「そ、そうだね。……近宮さんって、転校生なんだよね」
「はい」
「前はどこの学校にいたの?」
「仕事柄海外国内転々とすることが多かったので、通信制の高校に通っていました」
「へぇ、両親の仕事の関係かぁ……大変そうだね」
「いえ、楽しかったので別に苦ではありませんでしたが……難点といえば、歳が近い相手と親しくならなかったぐらいですかね。なので、仲良くしていただければ幸いです、千代さん」

 そう告げてニコリと笑えば、千代さんが固まり後ろの野崎くんが何かをメモるのがわかりました。なにかひらめいたんでしょうか。

「ずるい! 千代ちゃんだけ名前呼びずるい!」
「おや、千代というのはファーストネームでしたか。それは失礼しました」
「千代でいいよ、同い年だし」
「私も名前で呼んで」
「王子様の名前を呼ぶなど恐ろしいです」
「君の前では唯の男、というわけだよ」
「はいはい。口説くなら他所を口説きましょうか」

 そう言って鹿島さんの手を退けます。がっくりと項垂れた彼女に、堀先輩が「珍しいな」と声をあげました。

「近宮には鹿島のアレがきかないのか」
「はぁ、まぁ。よくあんなにスラスラ口説き文句いえますよね」
「いや、お前も大差ないだろ」
「失礼な、御子柴くん。私は悪ノリしていただけですよ」
「お前な、アレが悪ノリって――」
「あ、あの、!」

 クイっと裾を引っ張られ後ろを振り向きます。そこにはいつかの女子生徒がいました。

「近宮先輩っ、」
「はい、なんでしょう?」
「これ、調理実習で作って、あの、」
「私に下さるんですか?」

 そう尋ねればこくこくと頷いた彼女に、ありがとうございます、と告げて受け取る。じゃ、じゃあ! と告げて去ろうとした彼女に、待ちなさい、と声をかけました。貰ってばかりは気が引けます。

「お返しに、これを」

 そう言ってピンク色の薔薇の花をどこからともなく取り出して差し出せば、彼女は顔を真っ赤にして立ち去りました。ふむ、可愛いらしい。私に欠如した何かがある気がします。

「な?」
「な、ってなんですか、御子柴くん」
「鹿島」
「わかってます!」
「あ、なんか嫌な予感がします。失礼しますね」

 そう歩き出そうとした瞬間、鹿島さんと堀先輩に手を掴まれました。ので、はい、残念賞とそれをするりと抜けます。これくらいは準備ができています。

「では、また明日」

 そう言って笑って帰路につきます。その時の私は知りませんでした。堀先輩を敵に回してはいけない事を。鹿島さんのそれが激化することも。



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