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おそらく反比例
偶然、でした。駅を降りた時に会ったのは、眼鏡をかけたマネージャーさんでした。目をパチリと瞬いてふにゃりと笑った彼は、何処か幼く見えます。
「遥ちゃん、久しぶり」
「ええ、お久しぶりです。お元気そうで何より」
「君もね。今日は土曜日だけど、学校、かな?」
「いいえ、友達の家にちょっとお手伝いに」
そういえば、そっか、と言った彼はやんわりと私の手を取りました。そして、何か、ハッとしたように「ごめん、嫌だった?」と首をかしげます。
あざとい。今まで意識しませんでしたが、この人、あざとい。首を左右に振り、野崎くんの家の方向に足を踏み出します。
「マネージャーさんは今何を?」
「僕?……僕は今、回り回って講師をしてるよ」
「講師?」
「そ、英語のね。どうかした?」
「……いえ、大丈夫かな、と」
「大丈夫だよ」
ニコリと笑った彼に、複雑な心境を得ます。いや、でも、まさか。
「遥ちゃん、それは?」
考え込む私をよそに、彼は私の手にある花を見つめました。
「ああ、いりますか?丁度家にある薔薇の花が咲いたので」
そう言って、一輪、蜉蝣を取り出します。
「薔薇の花?」
「親が持っていたものなんですが、蜉蝣という品種だそうですよ」
「……ガラスのようだ」
「美しいでしょう?しかし、半日で枯れてしまうんです。だからエバーミング処理をしています。美人薄命と言いますが、それですね」
そう言えば、彼は少し目を見開いて、そうだね、とだけ告げました。何に驚いたんでしょうか。私が首をかしげれば、彼はなんでもない、と首を振りました。
「エバーミング処理ってなんだ?」
私の言葉に、御子柴くんが首をかしげます。
本日は、午前が、御子柴くん、私、千代さんで、午後からは私(夕方まで)、若松くん、千代さん、堀先輩になるそうです。午後から御子柴くんは遊さんと遊ぶようなので遊さんの分は御子柴くんに託します。
「エバーミング処理、というのは、」
そこまで口を開き、はっ、とします。
エバーミング処理とは、本来、遺体保存の技術を指します。
ブリザードフラワー、すなわち、プリザーブドフラワーを作る技術の名ではありません。似たような過程ではありますが、違うそれ。だから、彼は目を見開いた。
彼はエバーミング処理という単語を知っていました。まぁ、欧米は一般的ですかね。
「失礼、違いました。プリザーブドフラワーを作る過程と同じような処理でしたから。化学薬品につけたりして、生花の美しさを保たせようとしたそれですね」
私の言葉に納得したようなしていないような言葉をいただきました。まぁ、普通の反応でしょう。
その後、花言葉は、と聞かれましたが、花言葉、あるんですかね。帰ったら兄に聞いてみましょう。
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