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猫はかぶれませんよ
次に殺されたのは長男の暁さんでした。幼妻の夏目さんが泣き崩れてしまいます。先輩は、というと顔をしかめたまま黒瓜さんを見ていました。私は思考を切り替えます。彼はたしかにどこかで見たことがありました。仕草・癖・喋り方。変装をしていても、中々切り替えることは難しいのです。何処で、見たのでしょうか。ぐるぐると考えた結果、ひとつだけ覚えがあるのに気づきました。なので、去ろうとした彼を呼び止めます。
「――何処へいかれるんですか? 黒瓜さん。計画だけ企てて、去るおつもりですか?」
スッと目を細めながらそう告げます。彼は面白そうにコチラを見ました。油断してはいけません。彼からは嫌な感じがします。
「いえ、こういった方がいいでしょうか。死神マジシャン・霧島純平、と」
私の言葉に、先輩がギリリと歯を噛みしめるのがわかりました。理由など、わかりません。ただ、霧島純平は面白そうに笑うだけです。金田一くんが目を見開いています。彼はあまり関わりがないので仕方ないでしょう。おそらく、魔術列車以降初めてのコンタクトのはずです。ゆっくりと仮面を外した彼は、子供のような、でもどこか残忍な笑顔を浮かべています。
「殺人享受は立派な犯罪ですし、この際すんなり捕まってはいかがですか?」
「俺を捕まえるだって? 無理な話だ」
面白そうに彼はそう告げます。ナイフをツンツンと触っている彼は、まさに殺人享楽者という感じです。私や兄と相なれることはないでしょう。金田一くんも七瀬さんを庇うように前に出ます。
「そうですね。貴方には恐らく――戸籍がない」
「あれ? 高遠から俺のこと聞いたの? 嬉しいなぁ。俺に興味を持ってくれて」
「貴方に興味を?馬鹿なことは言わないでください」
「近宮さん、どういう――」
「コイツはもう、死んでるんだよ。戸籍的にはな」
私の代わりに答えたのは先輩でした。先輩は睨むように死神マジシャンを見つめています。ギュッと握った手は痛そうです。
「知り合いですか?先輩」
「コイツは――俺の――」
「んー? おっ! よく見たら、純じゃねぇか。まだ生きてたのか、お前」
つまんねーの。
そう呟いた彼と先輩を見比べます。先輩はぐっと何かに堪えるようでした。
「先輩、お知り合いですか?」
「ああ、なに? 教えてもらってないの? 遥チャン」
「貴方に名前で呼ばれたくありません」
「俺の、弟だよ。その隣りにいる奴はな。あの日、火事でアノ糞みたいな両親と死ぬはずだったのに、生き延びてやんの」
その言葉を聞いて、先輩は霧島に殴りかかりに行きました。ナイフを構えた霧島に、眉間に皺を寄せ、仕方がないと先輩の鳩尾を容赦なく殴ります。呻いて倒れた先輩に、霧島はナイフを下げました。
「貴方は飛んだクズですね、霧島」
私の吐き捨てるような言葉に、彼は少し目を見開いて笑いました。
「お前は飛んだ猫かぶりちゃんだな、近宮遥チャン?」
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