43
高宮さんと一緒
とりあえずノックすれば、彼は返事をしました。近宮です、と名乗れば扉が開きます。やはり、縄抜けをしていたのでしょう。彼は私を部屋の中に招き入れました。
「さっきの金田一くんとのお話、聞かせていただきました」
私の言葉に、彼は止まります。
「私は片親です。父はわかりません。なので、貴方と兄妹である可能性は十分にあります」
「でも、君には――生き別れの兄がいた」
そう告げた彼の表情には何処か見覚えがありました。何処で、と考えていれば彼は私を見下ろします。その仕草に、「赤尾さん?」と口を開きました。
そうです、彼はあのマネージャーに似ているのです。彼はニヤリと笑いました。
「やっと理解したようだ。でも、あの名前は偽名でしかない。僕の名前は高宮一葉だよ、魔法使いさん」
そう告げた彼になるほど、と納得します。彼が私に兄がいると断言した理由がわかりました。そして、あの魔術列車の事件後「海外へ行く」といった理由も。彼はあの魔術団を隠れ蓑にしていたのでしょう。
「――兄と私は確かに同じ両親から産まれています。しかし、兄はこう言ってます。アレは僕の本当の父親ではない、と」
私の言葉に彼はまた動きを止めました。そして、私を見下ろします。
「……彼は父親のことを何か知っている?」
「さぁ、知りません。兄は私にそれを隠そうとしますし、母も私の父親について何も言いませんでしたから」
「高遠遙一に話を聞いた方が良さそうだ。もし、君が僕の妹なら、だけど」
そう告げた彼は一歩私に近づきます。そして私の髪をすきました。
そう言えば、マネージャーをしていた彼は私に好意を抱いていたようにも思えました。演技なのか否かはわかりませんが。しかし、こういう態度を取るということは演技ではないのかもしれません。
彼は手を私の頬に触ると優しく撫でました。近づいた顔は整っています。そして、そのまま軽くリップ音を立てたそれに私が固まると、彼は私を抱きしめました。
「君が家族でいて欲しいのか、家族でいて欲しくないのか、僕はよくわからない」
そう告げた彼には戸惑いが見えます。私も戸惑っています。ファーストキスを奪われてしまいました。
PREV BACK NEXT