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近宮さんの困りごと
最近、少し困ったことが起きました。と、いうのも、学校において、遊さんの真似をしたのが悪かったのでしょう。悪ノリというそれでしたが、今となってはそういうものではありません。
きゃあきゃあと騒ぐ、いく先々で出会う女の子に、冷たくあしらうこともできません。自分で蒔いた種ですし、それはどうかと思うのです。
校内をうろちょろし、逃げついた場所は、ピアノが置かれた音楽室でした。声楽部も吹奏楽部もいないその空間はとても静かで寂しいものです。しかし、遣り過すにはいいでしょう。私はピアノの椅子に座りました。
――ピアノ、といえば。
もう数年弾いていません。最後に触ったのは何時だったか。魔術団の母の手伝いで弾いたいらいでしょう。
鍵盤を押せばポーンと美しく鳴った音に、そのままピアノを弾き始めました。曲は月光です。一番弾きやすくなれています。それに、考え事をするにはもってこいの曲です。時間を潰せば、恐らく堀先輩や遊さんあたりが迎えに来るでしょう。
家に帰ってもいいですが、兄は挿絵画家の幽月さんに呼ばれ、今北海道に行っています。家に帰っても誰もいないのは寂しいものです。
しばらくピアノをひいて、はた、と気付きました。何を、って、今日は確か部活は休みです。顧問の先生の都合で急遽休みになる、と、昨日、堀先輩が不機嫌そうに言っていました。今日、やたらと遊さんが元気だったのもその関係でしょう。
外はザァザァと大粒の雨。これは帰宅も大変そうです。折りたたみ傘を、と思いましたが、そういえば女の子に貸したのだと思い出しました。携帯で電車の時刻表を調べますが、電車が止まっているらしいです。
これはいよいよ大変なことになりました。とりあえず、音楽室を出て学校の玄関口まで降ります。家まで走れるでしょうか。運動に支障はないとはいえ、それなりに衰えています。迎えも期待できません。
「……帰るしかありませんよね」
大粒の雨の中、足を踏み出します。救いなのは、鞄が防水なことでしょうか。
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