53
【急募】介抱してくれる人



 次に目がさめると、朝でした。
 携帯を見れば、律儀なのか何なのかわかりませんが通話中になっていました。ぼんやりとした視界でそれを捉え、携帯を耳に当てます。兄の喋り声が聞こえました。

「――……にいさん、?」

 小さく言葉を吐けば、兄の喋り声が一度止まります。彼は誰かに一言謝ると、「遥!」と声を荒げました。

「大丈夫かい?」
「……体が、すごく、怠いです。風邪をひいてしまったようです」

 そういえば、兄さんが「帰りたい、けど、」と言葉を途切らせます。
 それからは数個の質問です。医者に行けそうなのか、とか、食事を取れそうなのか、とか。全ての答えはイイエですが、そう言えば兄は心配し無理矢理全てを終わらせてやって来るでしょう。なので、イエスと答えます。兄はホッとしたようでした。そして、明日には帰るから休むように言われ、そのまま電話を切ります。
 ……あの事件はもっと長かった気がしますが。

 このまま寝ると、そのまま衰弱死しそうです。携帯電話の電池はもうありません。とりあえず適当にSOSメールを送ります。
 学校に連絡を入れるにも起き上がれないので無理です。鍵は昨日から開けっ放しですし。誰かが助けてくれると信じて眠ってしまいましょう。
そのまま閉じた瞼に、私は重大な事を忘れていたのです。
 誰も、私の家の住所を知らない事を。



PREV BACK NEXT