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人のよい笑顔≠不審者ではない
その状況は、鹿島がたまたまいた学校の顧問に尋ねるというファインプレーにより解決した。通常なら話は通じないが、メールの内容が内容である。
とりあえず、ついたマンションを見上げる。いわゆる高層マンションである。オートロック式のそれ。第二の難問である。
インターホン呼び出しにも応じないそれに、どうするか、と言っていたが、鹿島がたまたま近くにいた女性を口説き落とし事なきを得た。
エレベーターで最上階まであがる。最上階は二部屋のみのようである。高遠と書かれた表札に、五人は息をのんでインターホンを押した。返答はない。
「ど、どうする?」
「遥は中にいるのかな?」
「それさえもわかんねーな」
コソコソと話していたら、不意にエレベーターの扉が開いた。出てきたのは男性だ。男性は五人を見て、首を傾げた。
「もしかして、遥の友達、かな?」
男性の言葉に、五人は警戒する。
もしかして:遥のSOSの理由の人。
野崎が、はい、と答えれば、男性はなるほど、と納得した。
「遥からSOSメールを貰ったのか。あぁ、僕は怪しまなくていい。僕は……遠山一葉。遥の親戚だ」
さらりとそう告げて自らの携帯――例のSOSと書かれたメール画面――を見せた男性に、周りはホッと息を吐いた。人の良さそうな笑顔で悪い人ではなさそうだ、と判断したらしい。男も男で、遥関係には犯罪者として見られないようにしているが、それは今は関係のない話である。
若松が遠山を見て首をかしげる。
「えっと、近宮先輩はどうしたんですか?」
「さぁ……僕もメールを貰って、今着いたところだからな」
「高遠さんはいないんですか?」
「彼はどうやら北海道にいるようだ」
肩をすくめた彼は悠々と自分の家かのように扉を開ける。そして、入って、と五人を招き入れた。
部屋の中は整っている。モデルルームのようなそれだ。しかし、それは5人からしたら、で、遠山一葉――改め、高宮一葉からは少し違和感を覚える。
バスルームの電気は付けっ放しだし、制服も脱ぎ捨てられているし、それは濡れているようにも見えたからだ。
高宮が遥の部屋の扉をノックし、友人が来ている旨を伝えるが返答はない。少し扉の隙間を開けて中を覗きこんだ高宮は、すぐにハッとしたようだった。
「遥!」
扉を開けて入った先には、ベッドに雪崩れ込むような近宮遥がいた。意識がないようにも見える。まさか、と息を飲んだ周りとは裏腹に、高宮は頭を少し抱えた。
「大丈夫だ、寝てるだけだ。ただ、熱はありそうだから……それで君たちと僕にSOSメールを送ったんだろう」
「風邪でよかった……なんか事件に巻き込まれたかと」
そう安心した五人に、高宮は首をかしげる。
「遥ってそんなに事件に巻き込まれてるのかな? 本人は全然そういうそぶりを見せないんだけど」
「この前は金田一よりマシ、って言ってましたよ」
「それでも、私たちからすれば結構な頻度だよね」
「……そうだったのか」
高宮はそう言って、遥の頭を撫でた。熱は高そうではある。さて、どうしようか、と高宮が考えていれば、高校生組は結論を出したらしい
「あんまりいても邪魔だな。親戚の人がいるんだったら大丈夫だろ」
「そうですね」
「学校の先生に伝えときますね!」
「ありがとう、助かるよ」
お大事に、って伝えてください!
そう言って帰って行った高校生を見送り、高宮は、さて、と口を開いた。その口元が幾分か緩んでいることを彼は気づいていない。
「遙一はしばらく帰ってこなさそうだ。遥の看病、か」
その後、慌てたようにかえってきた遙一が見たのは、高宮におかゆを食べさせてもらってる遥で、また一波乱あったのは言うまでもない。
また、高校生組が高宮の正体に気づくのは後日の話である。
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