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近宮遥の消失―1―



 ――おかしいな。
高宮は自分の腕時計を確認する。時刻は四時半。待ち合わせ時間からは三十分たっている。
 待ち合わせ相手――近宮遥が待ち合わせに遅れることは、ほとんどないと言っていい。逆に、待ち合わせ時間の数分前に来て待っていることの方が多いし、遅れるならば遅れるでちゃんと連絡をするはずである。だが、連絡はない。
 高宮は息を吐いた。また、あの兄弟に捕まっているに違いない、と。
 あの兄弟――どちらが年上かわかったものじゃないが――高遠遙一は、遥に対して過保護だ。まぁ、過保護なのは分からなくもない。おそらく、高宮自身も遥に対して過保護であるといえる。だが、遙一の方がひどいといえよう。なににしろ、遙一は遥が高宮にに会うのを良しとしない節がある。おそらく、それで、家に一旦帰ったものの、出ることができないのだろう。
 高宮はそう考え、二人の家であるマンションへ向かった。



 ベルも鳴らすことをせず、玄関の扉を当たり前のように開ける。顔をのぞかせたのは遙一で、思いっきり顔をしかめて見せた。それを気にすることなく、高宮は部屋に上がるとこれまた当たり前のように遥の部屋を開けた。それを見て遙一が口を開く。

「なに当たり前のように開けてるんですか」
「遥は?」
「遥ならまだ帰ってませんよ。友達と遊んで帰ると連絡がありました」

 遙一の声に、高宮は部屋を見渡した。隠れる場所はない。
 そこで、高宮ははて、と考える。入れ違いだろうか。しかし、携帯電話にはメールはなに一つ入っていない。

「君が遥を隠したんじゃないかと思ったが違うようだ」
「私が?」
「だって、君は僕と遥が会うのを良しとしないだろう」
「自覚があって、何よりです。それよりも、貴方と遥が会う?」
「今日約束していたのは僕だったんだが、待ち合わせ場所に来ない」
「いい気味ですが、初耳です」
「遙一が煩いから遥も嘘をつくしかない。これでも、待ち合わせ場所で三十分待ったんだが――」
「三十分?」
「ああ。メールも来ないから、君が隠したんじゃないかと」

 高宮の言葉に遙一は携帯を見た。遙一の携帯にも新着のメッセージはない。

「おかしいですね。遥が遅れてもメールを送らないなんて」
「何かに巻き込まれたかな? 遥の友人曰く、よく事件に巻き込まれているらしいし」
「否定はできません。GPSもオフにされてます」

 そう顔をしかめた遙一に、高宮はなんとも言えない顔をした。まだ高校にいるのかもしれない、と高宮がマンションを出ようとすれば、後ろから遙一に声をかけられる。

「私も行きます」
「……君は過保護すぎる」
「貴方は自分が国際指名手配されてることを自覚すべきです」

 遙一はそう言って何処からともなく黒縁眼鏡を取り出し、高宮に渡した。



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