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近宮遥の拐引―3―



「ここ、なんだよな……」

 そう堀はため息をついた。犯人に指定された場所でアタッシュケースをもって立つ。隣には公衆電話があり、恐らく犯人からはそこから電話がかかるのだと予測ができた。
 大変なことに巻き込まれたな、と息を吐く。
 親切心から高遠達を送ったのがいけなかったのか、遥が事件を釣り上げるのかは知らないが、巻き込まれるこちらからすれば溜まったものではない。
 それに、自分の行動で人の命が左右してしまうのだ。

 ――それにしても。

 堀はなんとなしに正面で何か電話をかけるフリをしている高宮をみる。
 他にも警官がいるらしいが、誰がそうなのか知らない。ただ、高宮だけが悠々とベンチにかけている。
 俳優のような出で立ちに飄々とした雰囲気。近宮に高宮さんに高遠さん、親戚ってあんなに似通るものなのか、と堀は思う。
 しかし、地獄の傀儡師、とはなんだろうか、と他のことを考え始めた時、近くの公衆電話がなった。
  恐る恐るその公衆電話を取れば、あの機械がかった声が耳につく。

「待ち合わせ場所、きたぜ。どこにいるんだよ」
「堀くん、謎々だよ」
「は? ふざけてんのか!」
「ふざけてなんかないさ、答えが次の場所だからね。7時30分までに答えをはじき出してね。じゃないと、君の友達はズドーン」
「っ、」
「親の隣に人。中と子の間はなーんだ?」
「親の隣に人、中と子の間……?」
「じゃあね、堀くん。七時三十分に会おう」
「は!?おい!!」

 ガチャリときれた電話に舌打ちをする。時計台を見れば、時刻は七時二十分をさしている。

 親の隣に人、中と子の間。

  頭の中で反復し、答えを弾き出そうとするが、なかなか出ない。
 なぞなぞ、といえば。頭の中にポンと浮かんだのは昨日だか一昨日だかの鹿島と遥と部員である。しょうもない下ネタじみた指に関してなぞなぞをだし、怒ったのは記憶に新しい。

「……指?」

  親指、の、隣に、人差し指。中指と小指の間には。浮かんだ言葉に、顔を上げる。

「親、人……中、子」

 看板のかしら文字だけを見ていけば、見つかったそれ。

「中、と子の間は――!」

 そこに向かってアタッシュケースを持ち走り出す。近場でよかったし、体力がある方でよかった、と堀は思う。薬局にたどり着き、辺りを見渡せば、ピンポーン、と呼び出しがなった。

「当店にお越しの、堀さま、堀さま。お電話が――」
「また電話かよ!」

 そのままレジまで走り、電話を変わってもらう。

「親指の隣に人差し指!中指と小指の間は薬指!つまり、薬局!ピンポンピンポーン!!だいせいかーい!」
「ふざけんなよ!」
「つぎはねぇ!つぎはねぇ!北にある停留所から七時四十分の高原高原行きのバスに乗って!右側の景色が特に美しいんだ」
「はぁ!?」
「じゃあね、間に合うように頑張って、堀くん?」

 ガチャリ、とまた切られた電話にしたうちに、頭の中で地図を浮かべる。あと、十分ほどしかないそれに店から飛び出し、停留所へと向かった。

  交差点を越え、停留所が見えてくる。そこで油断したのが悪かったらしい。目の前でしまった踏切に、中に踏み込もうとすれば整備員に止められる。

「緊急事態なんだよ!」
「だめ――」
「本当に緊急事態なんだ。悪いけど行かせてもらうよ」

  聞こえてきた声、堀に浮遊感が襲うと、誰かが踏切の中を颯爽と走り抜け、高原行きのバスに乗せられる。
 丁度しまった扉に、地面に下ろされた。見上げれば高宮が眉を顰めたままだ。どうやら高宮が堀を抱えて渡りきったらしい。

「ありがとう、ございます」
「いいや。君には遥の命がかかってるからね、当然なことをしたまでだ。……で、ここまで君の予測どおりな訳だ」

  高宮がそう言って、座席の奥に座る。そこにいたのは高遠と涼だ。

「私はただ、犯人は転々とするだろうから踏切の向こう側にいます、といっただけですよ」
「あー、見てるこっちがヒヤヒヤした」

 そう言った涼に、堀は息を吐いて涼の隣に座り息を吐いた。そして、窓の外を見る。右側をみろ、という指示通りだ。



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