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近宮遥の拐引―5―
「面白いことが起こっただろう?」
そう肩をすくめて見せた高宮に、面白いことなど何も起きてない、と堀は思う。
周りは生きている、生きている、というが、それが自分への励ましなのか嘘なのかはわからない。自分は祈るしかないそんな状態だ。貴方はよく頑張りました、とは明智の言葉ではあるが取引に失敗したのは無理に吊橋に足を踏み出した自分のせいでもある。
移動する車の中、である。ほら、ほら、と、励まそうとする涼に、「悪い、ちょっと考えさせてくれ」と言い、窓の外を見る。
そこに、一瞬見知った制服が見え、それが何かを頭が判別すると口が開く。
「明智警視、止めてください」
「どうか――」
「近宮がいた!止めてください!」
その声に急ブレーキがかかり、止まる。ドアを開け其方に走ればやはり倒れているのは遥である。
「近宮!」
ぐったりとしているそれに明智がどいてください、と堀の横から確認をする。
「息はある……生きてますよ!」
安堵した堀の横で高宮が顔をしかめた。
「足から出血がある。ナイフで切られたそれじゃない。銃弾が掠ったのか。救急車を呼ぶより、パトカーで連れて行った方がはやいんじゃないかな」
高宮は楽々どいて遥を抱き上げるとパトカーに向かう。明智が顔をしかめた。
「貴方は本当に関与していないんですよね?」
「そうだとも」
「……貴方は大切な妹がこんな状態になったのに、余裕らしい」
「余裕?僕が?」
くるり、と高宮が明智と堀の方を向く。その表情は無表情である。ぞくり、とした何かを感じ、堀は目をそらした。
「余裕なんてない。余裕があったら、一人で遥を探すし、犯人も探すよ。さて、僕がどうしてそれをしないかわかるかな」
「……」
「僕は僕のせいで、遥の周りが壊れてほしくないんだ。でも、そろそろ堪忍袋も限界だ。はやく逮捕した方がいい」
―― 僕が犯人を殺す前に。
くるり、と背中を向け近くにあったパトカーに乗り込むと、高宮はその場から離れる。明智は眉をひそめて、息を吐いた。
「堀くん、行きましょう。病院まで送りますから、君は近宮さんが起きるのを待っていてください」
「……はい。明智警視は?」
「私は涼くんと捜査に加わります。彼が何をするかわからないのでね」
明智警視の言葉に、堀は高宮がさった方向を見た。
明智に病院に送ってもらい、堀は近宮の病室へ向かう。
医者から具合を聞き、病室に入れば横たわっている遥を見つけた。高宮がいるかと思えばいないらしい。しん、とする世界の中、ピクリと遥が動いた。そして、ゆっくりと瞳を開ける。
「近宮!」
「……――――――、?」
「今、医者よんでくる!」
何かをつぶやいた遥に、堀は医者を呼びに行く。
医者、それから途中で合流した一と高遠と病室に戻れば、遥は不思議そうなキョトンとした顔で三人を見た。
「遥!よかった!目を覚まして!」
そう言って抱きしめた高遠に、遥はそれさえも小首を傾げて口を開く。
「貴方は、だれですか?」
その言葉に、周りは固まることしかできなかった。
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