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近宮遥の喪失―3―
謎が全て解けたらしい。らしい、というのは今回堀は謎解きに関わっていないのでどのタイミングで、どんか調査をしていたかもしらないからである。何度か覗きにきた金田一兄弟や剣持警部、明智警視といった面々、自分がくるまで遥の相手をしに来ている高遠とは顔を合わせたが、高宮とはあれ以降一度もあっていない。
――そういや、あの人の名前は高宮なのか遠山なのかどっちなんだ。
そんなことを思いながら事務所にはいれば、警察に促されるまま部屋に入る。涼に誘われてソファに座れば、また扉が開いた。入ってきたのは高宮と遥である。遥は高宮に促され、ちょこんと堀の隣に座った。
「これで揃いましたね」
そう告げた高遠に、一は話を切り出す。この事件はただの誘拐事件ではなく、今回殺害された安岡さんを殺すための計画的なものであった、と。
「この事件を企んだ犯人・道化師はこの中にいる!」
堀はいつも、これはまるで演劇を見ているかのように錯覚する。
まるで、映画のような、ドラマのような、舞台のような。
金田一はおそらく探偵役であるし、高遠なんかはワトソン、自分は巻き込まれた人間Aというところだろうか。
安岡は共犯者だった。そして、本来ならば速水玲香を巻き込むはずだったそれ。しかし、それは安岡が速水玲香からマネージャーを外されたことにより計画が狂う。だから、遥が代わりに誘拐された。話を聞いた速水玲香が社長の信頼が落ちるように。安岡にとって、そういう計画だったもの。
しかし、犯人にとっては違うもので。犯人にとっては、安岡を殺すための布石。犯人が犯したミスは一つだけ。
一がパソコン上で録音された音声を流す。そこには、安岡の妻――安岡真奈美の声、錯乱し、堀を責めるような声が入っていた。
「ごめんなさい、私ったら……」
「――あの時はなんも思わなかったけど、おかしいな」
堀が呟いた言葉に、安岡真奈美は堀を見た。
「なにが、よ、」
「貴方は、見てもいないのに、どうして堀君が足を踏み外したと?」
高遠の声――何処か冷たいそれに、「警察の人が言ってたのを聞いたのよ!」と声を荒げる。涼がそれを聞いて口を開いた。
「なんて聞いたんだ?」
「彼が板を踏み外して落ちたって!」
「おかしいな、俺は板を踏み外して落ちたわけじゃない」
そう告げた堀に、安岡真奈美はハッとしたようだった。
「堀先輩の言う通り。アンタはテッキリ堀先輩が落ちたって聞いて、細工した板を踏んだと思ったんだ」
「実際は風に吹かれて綱が切れたんだ。ていうか、高宮がいってた『面白いこと』ってこれかよ」
「ボロが出ると思ってね」
涼の言葉に高宮が肩をすくめる。涼はそれを聞いて気づいてんなら言えって、と毒づいた。真奈美が顔を少し青くして周りを見た。
「っ、でも!夫が殺された時!私たちは一緒にいたじゃない」
「話を聞いていなかったみたいだ。最初は共犯者がいた、だから、貴方がここにいても事件が成立する」
「貴方の計算外は、遥の記憶がなくなってしまったこと、でしょう。それにより、完璧に仕組んだはずのタイムテーブルが狂った」
「そう、遥がこう証言したら、この犯罪は完璧だっただろう。『私は12時のチャイムで起き、取引が失敗した日に安岡さんが殺されるのを見た』」
「その台詞があれば、確かに此方の推理は狂いますね」
高宮の言葉に明智警視が頷く。
「さて、貴方が細工した板は今警察が調べている。指紋や貴方の形跡が現れるのも時間の問題だ。変な言葉さえ発しなければ――いや、遥を巻き込まなければ、完璧な美しさがある犯罪だっただろうに」
そう告げた高宮はじっと安岡真奈美を見た。安岡真奈美は何か諦めたように、そうよ、と口を開く。
「私がアイツを殺したのよ!」
そう吐き捨てるように告げた安岡真奈美は過去を話し始める。ひどい過去、ではある。同情の余地も確かにある。しかし、人を殺すのは如何なものかと、堀は眉間にしわを寄せた。
そして、なんとなしに遥を見た。眉間に皺をよせている。どんな理由にせよ、巻き込まれた方からすればたちの悪い話である。
「どうせなんの証言も口にしないのなら殺しておけばよかった」
そう吐き捨てて自白を終えた彼女を迎えたのは高宮と高遠だ。
スラリ、となにもない場所から薔薇の花を取り出した高遠。それに対してポケットからナイフを取り出した高宮。それを見て、金田一兄弟が声を上げる。
「高宮!」
「高遠!」
「金田一くん、君は一つ誤解をしてる。どうして僕が捜査に加わったかわかるかな?遥を酷い目に合わせたあげく、怪我をさせた犯人を殺すためだ」
「高宮、邪魔です。コレは私が殺します。妹を傷つけた罪は重い」
ピリピリとした雰囲気に、堀は目を白黒させながら二人を見比べる。二人とも表情がない。ぞくり、とするような、何かを感じる。
その時、である隣からため息が聞こえた。堀はそのまま視線を隣――遥に向ける。遥はその視線に苦笑いをすると、「……まさかこんな展開になるとは」と堀だけに聞こえるぐらいの声で呟きながら立ち上がった。
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