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近宮遥の喪失―4―



「二人とも、手を止めてください。貴方たちが手を下すほどの人じゃないでしょう」

立ち上がってそういえば、二人だけでなく全員の視線をいただきました。高宮さん、もしくは、兄さんの少なくともどちらかが気づく、と思っていたのですが。読みが外れたようで。

「近宮さん、記憶が――」
「すいません、明智警視。実は記憶喪失なんておこしてません。犯人と揉めたので黙るために演技をしていました」
「……犯人と揉めた?」
「殺された安岡さんがグルで、恐らく彼が殺すことが目的じゃないか、と安岡さんに犯人の前で言ったので。まぁ、安岡さんがスタンガンで私を気絶させられたわけですが。その後すぐ、ですね。彼が殺されて、私が撃たれて殴られたのは」

  目を見開いたまま、固まっている二人から薔薇の花とナイフを没収し、二つをカードに変えます。そして真奈美さんを見ました。

「貴方は貴方だけでこの計画を?」
「……」
「貴方を見る限り、地獄の傀儡師とは関わりがない。推理小説を書いたりするわけでも、犯罪研究をしているわけでもない。しかし、これは素人の思いつきを遥かにこえています。後ろに誰かいるのでは? 例えば――」
 ―― 死神マジシャン、とか。

 そういえば彼女はピタリと動きを止めます。図星、でしょうか。死神マジシャン?と首を傾げた涼君に明智警視が眉をひそめます。

「貴方達に堀先輩との接点はない。殺された安岡さんはあるでしょうが、彼にとって堀先輩は私のただの先輩――そこまで仲がいいとは思われていないでしょう。と、なると、私の交友関係を調べ上げ、なおかつ巻き込むようにした人間がいるはずです」

 そう言えば何かを言おうとした彼女の唇に指を当てます。

「ここで容易な発言はしないほうが身のためですよ。何処で死神マジシャンが見てるかわかりませんから。警察でお話しください」

 そう言えば、彼女は目を瞑って、小さく私に「ごめんなさい」と呟き、ヨロヨロと近くにあった紅茶に口をつけました。
 その途端、でした。苦しみだした彼女に、なぜ、という疑問が頭の中に沸き起こります。紅茶に毒が入っているのでしょう。
 なぜ、彼女は。バタバタと警察の方が彼女に手を貸しますが、彼女は息絶えてしまいました。
 なんと、後味が悪いのでしょうか。
 口にすれば、殺されるのと思っていましたが、違うようです。彼女の後ろに誰がいたのか、本当にそれが死神マジシャンであるのか。わからずじまいで事件の幕は閉じました。



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