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我輩は猫、ではありません



「は? 遊さんの代わりに堀先輩につきまとってほしい?」

 私の言葉に台本を持った遊さんと、どこか疲れた表情の野崎くん、そして千代さんがいました。

「今回の劇の台本、王子が苦悩するだろ? それが、わからないらしい」
「ああ、嫉妬心も切なさも遊さんには無縁ですもんね」
「そこで、近宮が徹底的に堀先輩を奪えばいけると思った」
「私がいても遊さんが割り込むのでは?」
「じゃあ、鹿島、お前は四日間堀先輩と話すな!」

 そうはっきりと告げた野崎くんに、遊さんを見ます。うなだれた彼女に、苦笑いをしました。
 これは厄介ごとになりそうな気がします。とりあえず、堀先輩に遊さんのように近づいておけばいいでしょう。


「そういえば」
「どうした?近宮」

 3年の教室、堀先輩を前に、ふと、頭の中に浮かびます。
 そういえば、あの二人は一葉兄さんの正体を知ったというのに、私への対応は変わりません。私としては嬉しいですが、なんというか……うん、警戒心がありません。一応、凶悪犯なんですよね、あの人。まぁ、私といると普通に見えるでしょうが。

「いえ、この前、兄と放課後出かけたんですが、野崎くんにネタにされたんですよね」
「あぁ……あの話、モデルは近宮だったのか」
「……はやくありません?? 私のそれ、いつもよりはやくありません??」
「まだネームだったぞ」
「今のうちに燃やせませんかね」

 そういえば、周りがこちらを見たので、ニコリと笑って冗談ですよ、と言っておく。半分は、ですが。私だとはばれないとは思いますが、あまり嬉しくありません。
 そんな会話をしている私と堀先輩に、周りにいた先輩方が口を開きました。

「それにしても、近宮ちゃんが堀ちゃんとべったりなんて珍しいなぁ、どうしたの?」
「だめですか?」

 そう首をかしげてみます。なんだか先輩方は顔を背けました。それに首をかしげます。答えは教えてくれなさそうです。その時、火祀先輩がやってきました。

「なんで3年の教室に近宮がいるんだよ」
「堀先輩と話してるんで、火祀先輩には用はありませんねぇ」

 おそらく自販機から教室に帰ってきた火祀先輩に、そう言います。飲み物くれるなら別ですが。

「でも、本当にどうしたんだ?」
「四日間だけ我慢してください」
「……またなんかアレか? 野崎関係か?」
「……私のワガママですよ、いけませんか?」

 台本を読みつつそう答えます。おそらく堀先輩に理由を話せば遊さんにアグレッシブなお説教が待っているでしょう。なんでわからねぇんだ! とか言って跳び蹴りする姿が浮かびます。なら、黙っておくべきでしょう。
 すると、三年生の先輩がぼそりと口を開きました。

「猫のデレ期だ……」
「にゃんこさまのきまぐれだ……」

 私は猫ではありませんが。
 そう思いながら台本のわからない箇所を堀先輩に聞いていきます。
 今回は役者ではなく演出のお手伝いです。元々魔術団にいたので、役者としてステージに立つのもいいですが、演出にも関わりたいのです。しかし、演劇も中々楽しいですが、そろそろマジシャンとして舞台に立ちたくもあります。まだ怖い部分もありますが、それは場数を踏むべきでしょう。

「どうしましょうかねぇ」

 ちらり、と台本から覗く紙にはマジック甲子園と書かれた紙がありました。担任が渡してくれた紙です。そのあと何を思ったか堀先輩に頭を撫でられました。なんでしょうか。



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