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猫と犬と飼い主と
「と、いうわけで、遥にも協力してもらって、先輩と話さないように頑張ったんですけど、もう今日話しちゃったからアウトですよねー!!!」
そう告げたのは2年の鹿島くんである。
代役をする堀ちゃんにかわり、演出関係のため舞台外にいた近宮ちゃんは相も変わらないポーカーフェースで「そういうことです」と告げる。
その様子に、ああ、だから近宮ちゃんが堀ちゃんを引き止めていたのか、と納得した。普段、猫のような彼女は確かに堀ちゃんと鹿島くんと一緒にいることが多い。でも、どこかマイペースというか、一線を引いているというか、そういう風なのだ。だから、鹿島くんの行動もそうだが、堀ちゃんがしきりに不思議そうにしているのが印象的だった。
先輩一緒に帰りましょー!! と抱きつきに行った鹿島くんに犬の面影を見る。まるで飼い主の元に探し犬が戻ってきたようである。それに対し、近宮ちゃんはマイペースに鞄に台本などをなおしていた。うん、鹿島くんが犬なら、まさしく彼女は猫だろう。
そんな彼女に、堀ちゃんが口を開く。
「近宮ー、帰るぞー」
「今日は遊さんにお譲りしますよ」
……ここ最近のやり取りである。近宮ちゃんが、堀ちゃんに帰りましょう、と持ちかけていたなごり。そう、猫のような彼女が堀ちゃんと帰っていたなごりだ。
しかし、ワンコが戻ってきたらいつもの対応に変わる。それを見て堀ちゃんが目を瞬いた、が。
「なーに、言ってんの! 遥、帰るよ!」
「わかりましたから、離してください」
鹿島くんが近宮ちゃんに抱きついたため、そのまま引きずられるように連れて行かれた。
うんうん、人懐っこい犬になつかれた猫のようだ。または、ふらふらと歩く猫を、飼い主に忠実なワンコがくわえて連れ帰る様である。その際、ひらり、と彼女のかばんからプリントが舞う。
「近宮ちゃん、何か紙落ちたよ」
「ああ、すいません」
そう言ってスラリと彼女は俺の手からプリントを取るとそのまま大事そうにポケットにいれた。演劇の資料だろうか、まじめだなぁ、と思いながら仲良く並ぶ三人を演劇部一同で見送った。
その後、近宮ちゃんをかまう癖がついた堀ちゃんが、いつも通りの近宮ちゃんにも過保護になるのは別の話である。
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