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兄と妹≒魔法使いと弟子
「遥、これは?」
そう尋ねた兄に目を瞬きます。彼の手には一枚のプリントがあります。担任の先生から渡されたそれです。これがもし小学生ならば授業参観のお知らせだったでしょう。しかし、私は高校生です。授業参観ではありません。
……授業参観のプリントでも遙一兄さんがこう言ってきそうですが、それに関してはノータッチでいましょう。
「先生に出てみたらどうだ、と言われました」
そういえば遙一兄さんは私の隣に座ります。ソファが沈み込みます。
「大丈夫なんですか?」
そう告げた彼に少し首を左右に振ります。演劇で慣れてきたとはいえ、ステージはまだあの記憶と結びついています。演劇は『役になりきる』からステージにいる時は何も考えないのでしょう。しかし、コレはそういうわけにはいきません。私の様子に、遙一兄さんは「捨てないということは出たいんでしょう?」と尋ねる。
「そうですね、できれば」
私の答えに彼は少し考えてから口を開きました。
「じゃあ、慣れるしかないですね」
そう妖艶に笑んだ遙一兄さんに、嫌な予感がします。しかし、逃亡しても無意味でしょう。鼻歌を歌う彼に、遠い目をしてしまったのは仕方のないことでした。
――それからしばらくして。
がっくし、と机に埋もれます。御子柴くんと遊さんが不思議そうに私を見ました。
「どうしたの? 遥、最近元気ないね」
学校も休みがちだし。
そう告げた遊さんに、ありがとうございます、と苦笑いしました。最近、部活を、どころか、学校を休みがちです。兄がちゃんと計算しているので進級は大丈夫でしょう。野崎くんの手伝いにも行けていないので、堀先輩の負担が増えている気がします。しかし、もう少しだけ頑張って欲しいです。
「ちょっと色々とありまして」
そうため息をついて起き上がります。
最近、それはもう色んなところに足を運びます。東奔西走とはこのことで間違いなさそうです。修行と称して兄のアシスタントをすることもあれば、いきなりステージに立たされることもしばしば。頭の中であの記憶が駆け巡りますが、そこは兄がうまくフォローしてくれます。
――でも、やはり、楽しいのです。ステージにたって、マジックを披露するのは。
人々の視線も、期待も、全てを良い意味で欺向く感覚は、素晴らしいものです。だから、私はそのうち、女子高生ではなく「マジシャン」に戻るでしょう。
「……まぁ、いつかはわかりませんけど」
小さく呟いた言葉に遊さんと御子柴くんが首を傾げます。それになんでもない、と告げました。彼らにはまだ言わなくて良いことでしょう。
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