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疑惑浮上中
「あー、最近、近宮が学校休みがちだからな」
部活にも来ない。
最近、遥さん手伝いに来ないね、と呟いたのは佐倉で、それに答えたのは堀だ。目の前に置かれている原稿用紙は白く、背景は殆ど書かれていない。いつもなら二人体制で進んでいくが、最近は堀の一人で――いや、最初は一人だったが近宮が来てから二人体制だった――背景を進めている。それもこれも野崎が背景をかけないからであるが、それに関しては背景担当の二人はもう諦めている。
「もしかして、また事件に?」
「いや、なんか高遠さんに連れまわされてるらしいぞ」
顔を真っ青にした若松に、堀が背景を描きながら告げる。この前は台湾にいますってメールが来た、と言った堀に三人の視線は堀に向く。
「台湾? なんでまた」
「家族旅行かな? いいなー」
「資料送ってくれないかな」
「いや、旅行じゃなさそうだったぞ。この前学校で会った時に話を聞いたら高遠さんにスパルタ修行受けてるって言ってたからな。あと、台湾舞台にするなよ、野崎。キラキラした目すんな」
できた、と堀は一枚佐倉に原稿用紙を回す。佐倉はベタ塗りに入り、堀は違う原稿用紙を手に取った。
「スパルタ修行?」
「マジックのかな?」
「あ、そっか。近宮先輩、実はすごいマジシャンだったんですよね!」
「そうだな。実はすごいマジシャンだった」
「野崎くん、若松くん、実はというか、遥さんの本業そっちじゃない? 今は休んでるだけって言ってたし」
そう告げた佐倉に、若松が首をかしげる。
「あれ? じゃあ、マジシャンの修行はじめたってことは、近宮先輩マジシャンに戻るんですか?」
「……」
若松の問いに、三人が動きを止める。確かに、マジシャンの修行を始める=マジシャン活動復帰を試みてるになる。そして、それは。
「えええ! 遥さん転校しちゃうんじゃない!?」
そう、佐倉の言う通りになる。元々、近宮はマジシャンとして日本だけじゃなく世界中を転々としていたわけで。そうなると出席日数などの関係から通信制の高校の方が都合がいいわけで。
「おいおい、魔法使い役はもう近宮で結構固定してるぞ……」
転校すると、舞台の配役が狂うわけで。
演出も、来年からは彼女に引き継ぐ気でいたわけで。
「背景担当が堀先輩だけになりますね」
「本当だな。スケジュールがまた変わってくる」
背景担当がまた堀一人になるわけで。
そうなるとまた締め切りスケジュールに変更が現れるわけで。
四人は顔を見合わせる。そして、サッと顔を青くした。
――ヤバイ。これは何としても引き止めなければ。
目的は違えど、四人の心が一致した瞬間だった。
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