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最善の予防線とは
「火祀先輩」
帰り道、見えた背中に声をかけます。振り向いた先輩は少し眉間に皺を寄せました。うん、変わりませんね。
「なんだよ」
「いえ、今度マジック甲子園に出場するんですが」
「……おう」
「どうも、某『死神さん』の気配がするので、先輩がいてくれると助かるなって思いまして」
「いかねぇよ。おまえ、俺をレーダーにするつもりだろ」
そう白けた表情を見せた先輩に、ばれましたか、と呟きます。
「俺はレーダーじゃねぇ。第一、気配がするなら参加しなきゃいいだろうが」
「ごもっともですが、参加する流れになってから気づきました」
「馬鹿野郎」
振るわれた拳をバックステップで避けます。余計に顔をしかめた先輩は「いかねぇからな!」と吠えるように言いました。
「残念です。じゃあ、誰が死神さんかわかったらメールで教えてくださいね」
「はぁ?」
「テレビで見てくれるんでしょう?」
そう笑いながら言えば、先輩は動きを止めます。ふむ、その様子では見てくれるようです。先輩は慣れてしまえば結構心情がわかりやすいですね。
では、とそのまま先輩を置いて、街中に向かいます。次は、明智警視と待ち合わせです。是非ともケーキセットを奢ってもらいましょう。
やってきたのは何時ものお店です。そう、最初に明智警視に連れ込まれ、高宮さんにもよく連れ込まれ、野崎くん達とのエンカウント率がやたら高いお店です。ケーキやパフェがとても美味しいのでついついきてしまいます。……太る、という言葉は無視です。
店に入ると、明智警視が片手をあげました。男性の店員さんに言えば微妙な顔をして案内されます。まぁ、彼はいつも私と高宮さん、何故か察知してきた兄を知っているので、おそらくは「浮気か?」とか思っているのかもしれません。
席に着くと、明智警視は優雅に笑いました。コーヒーとミルクティーとケーキを二つ頼んでくれた明智警視は間違いなくいい人でしょう。
「お待たせしました」
「いえ、でも、珍しいですね」
そう告げた明智警視に、「貴方を呼んだことですか? 兄を連れてないことですか?」と首を傾げてみます。
「両方ですよ」
「傀儡師の方は何処にいるか知りませんが、兄はたぶん家ですね」
「いいんですか?」
「いや、結構重大な相談というか、嫌な予感がするので」
「嫌な予感?」
首を傾げた明智警視は何処か幼く見えます。私は本題に入ろうと、テーブルに例のプリントを置きました。
「マジック甲子園……高校生マジシャンナンバーワンを決める大会ですね? 今年はテレビで放映されるとか」
「ええ。これに出場することになりました」
私の言葉に明智警視はパッと顔を輝かせました。
「本当ですか」
「はい、」
「……もうステージに上がっても大丈夫なんですか?」
「最近、兄にしごかれまして。それでやっと、という感じですね」
私の言葉に明智警視は「近宮さんの復活も近いですね」と笑います。うん、カフェの店員が軽く黄色い悲鳴をあげましたが気にしません。本題に入りましょう。
「明智警視、相談事はコレです」
「と、いうのは?」
「私が参加する流れが、できすぎている気がするんです。そうですね、まるで『マジシャンズセレクト』みたいなんです」
そう告げれば、明智警視の目の色が変わりました。
「私の学校に奇術部――マジック関連の部活はありません。担任の先生は学生時代にマジックの経験は少しはあるようですが、今年までこの大会を知りませんでした」
「……続けて」
「極め付けは、先生宛に参加者公募の手紙が来たこと、でしょうか。他の先生方には来ていません。考えすぎならいいんですが、今年からはテレビ放映されるでしょう? とても嫌な予感がします」
「貴方が浪漫学園に通っていることは一般的にはバレていないはず……と、なると確かに可笑しいですね」
「だから、相談を、と思いまして。恐らくは高宮さんではない気がします」
「ああ、それはわかります。高宮なら貴方を巻き込まないでしょうね。そうなると、霧島ですか」
眉間に皺を寄せた明智警視に、頷きます。
「私が殺されるならまだしも、私の友達に手を出されたら困ります。だから、助けてもらえませんか?」
そう首を傾げます。明智警視は静かに頷きました。
「わかりました、貴方を助けましょう」
明智警視の力強い言葉にホッとします。まぁ、それからしばらくして兄がやってきたのは最近の恒例でしょうか。しかし、最近より少し遅れています。恐らく何処かへ出かけていたんでしょう。
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