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三賢者と魔法使い



 リハーサルは順調に終わりました。内容はただただマジックするだけなので言いませんが。ただ、スタッフが目を見開いていたのがとても面白かったです。途中で高校生と付き添いであろう大人、そして、マジシャンのスクワードさんがいました。高校生や付き添いは兎に角、スクワードさんは何をしているんでしょうか。彼はプロです。私のマジックを見て歓声をあげている場合ではないでしょう。まぁ、おそらく彼は前座ですが。
 そんなこんなで、リハーサル後に舞台袖にいる兄と合流すれば、兄は黒髪が美しい女性――蘭堂さんに絡まれていました。声をかけるか否か迷っていると、兄が私に気づいたようで振り帰ります。

「遥、終わった?」
「はい、終わりました。花森さんが遅れているので顔合わせは10分後だそうです」
「……近宮遥?」

 そう私の名を呼んだ蘭堂さんに私は「何でしょうか?」と首を傾げました。

「ちょっと、どういうこと?」
「どういうこともなにも、君には関係ないことでは? 兎に角、私は貴女に興味はないですし、今後関わらないで頂けますか」

 はっきりと告げた兄を見上げます。疑問形であるはずの言葉が疑問形になっていません。

「行こう、遥」

 そう私の手を引いて兄は歩き出します。振り向けば蘭堂さんは鬼の形相と化していました。視線の先は私です。とんだとばっちりでしょう。そのまま苦笑いして兄を見上げます。

「元カノですか?」
「違いますよ、彼女が僕に言いよってきただけだ」

 ……私を口実にして振ってないことを祈りましょうか。逆恨みは怖いですからね。

「あ、見つけましたよ、近宮さん!」

 そう走り寄ってきたのは男性のスタッフさんです。キャップをかぶり、ふんわりとした髪型をしています。

「花森さんが来たので、出演者の顔合わせするって山ノ内さんが!」
「ありがとうございます」

 スタッフさんの言葉に、お礼を告げます。

「お兄さんはやっぱり控え室だそうです! あと、蘭堂さんを見てませんか? 控え室にいなくって」
「ああ、彼女なら向こうに。妹をよろしくお願いします」
「はい! 山ノ内さんに伝えておきます! あ、打ち合わせはCスタジオですよー!」

 そのまま駆けていったスタッフさんを見送ります。私の控え室の前で兄と別れると、今度はスクワードさんと鉢合わせしました。

「近宮遥だー! 本物だ!」

 そう目を見開いた彼に何とも言えなくなりました。「僕はスクワード!」と手を差し出した彼に、私もそれに応じます。

「わぁ、魔法使いの手に触っちゃったよ!」

 ハイテンションで告げた彼に、苦笑いしまてしまったのはしかたありません。

「君も今から打ち合わせでしょ?」
「ええ、」
「一緒に行こうよ! 僕、花森さん苦手なんだよねぇ!」
「ああ、それはわかります」

 そう頷けば、彼は目を瞬きましたが私は首を左右に振ります。スクワードさんには関係ありません。

「スクワードさんはなぜこの仕事を?」
「君が出るかもって聞いてさ! いてもたってもいられなくて!」

 目を輝かせた彼はとても幼く見えます。顔が整っているので余計でしょうか。私が出演していることを知っているのは山ノ内さんでしょうし、山ノ内さんに聞いたのでしょう。しかし、謎もあります。どの段階でスクワードさんは私が参加することを聞いたのでしょうか。

「僕、君のファンなんだ! 君と近宮先生のマジックを見て、マジックを始めたんだよ!」
「おや、では、比較的最近ですか?」
「7、8年前かな? 高校生のときに君のマジックを見てマジッククラブに入ったんだ」

 ニコニコと笑いながら彼は打ち合わせ場所の扉をノックしました。扉を開ければ、同い年ぐらいの人たち――決勝に残った高校生でしょう――と、その付き添い、そして花森さんと付き人がいます。遅い、私を待たせるとは何事だ、といった彼に、スクワードさんがボソリと「貴方が遅刻したんじゃん」と呟きました。こっそりと同意しておき、ニコリと笑っておきます。

「申し訳ありません、これでも急いだんですが」
「ふん、お前がまたステージに立つことになるとはな。あの事故で親の七光りがいなくなって清々したと思っていたんだが」
「ふふ、それは申し訳ありません。やはり、マジックが好きなもので。スクワードさん、座りましょう?」

  そうスクワードさんに促せば、スクワードさんは頷いて花森さんとの間を一つ開けて座りました。私はその隣の一番入口側――即ち下座にお邪魔しましょう。またノックの音が聞こえ、先ほどのスタッフさんが蘭堂さんを連れてきました。同じような花森さんの言葉を鼻で笑った彼女は私を睨んでから花森さんとスクワードさんの間に座ります。居心地が悪い中、打ち合わせは進みました。ううん、やはりこういう場は苦手です。



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