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事実は小説より奇なり、です




 打ち合わせが終わると蘭堂さん、花森さんが部屋から退出し、それに合わせて山ノ内さんが退出しました。それを見送って大きく息を吐きます。スクワードさんも同じく息を吐きました。

「あんなに威圧しなくてもいいよねぇ」

 そう苦笑いして高校生を見たスクワードさんに、高校生たちもホッとしたように息を吐き出します。

「アレはもう治らないでしょう」
「蘭堂さんは前はそんなことなかったんだけどなぁ、近宮さんなにかしたの?」
「いえ……しかし、彼女は少々勘違いをされていますので、なんとも……」
「近宮?! 本物?」

 おっと二度目のパターンです。しかし、同い年あたりなので簡潔に自己紹介しておきましょう。

「近宮遥です。今は普通の高校生として生活してます。今回の特別枠です」
「本物の近宮遥なのね! 同い年ぐらいかな、とは思ってたけど……」

 そう口を開いたセミロングの女子高生は一番左に座っています。資料の上には見覚えがあるペンがあります。……。

「月刊ロマンスの応募者全員サービス……」
「え!」

 しかも、「恋しよっ」バージョンです。なるほど、ファンですか。

「『恋しよっ』がお好きなんですか?」
「近宮さん、わかるの!? 凄い好きなの! 特に尾瀬くんと和歌ちゃんが!」
「鈴木くんとマミコじゃないんですね」
「あの二人も好きだけどね。特に尾瀬君が好きなのよ。近宮さんは誰が好きなの?」

 そう首を傾げた彼女に、アシスタントしてるだけで特には、とは言えません。とりあえず「高近兄弟ですかね」と告げておきます。

「……えっと、失礼ですがお名前を聞かせていただいても?」
「ごめんなさい! 私ったら……私は吉岡渚。花咲高校三年よ。高校生クイーンって呼ばれていたりするけど、その名に恥じないようにするわ」
「――クイーンと近宮遥が思ってたより幼稚でガッカリした」

 そう告げたのは女子高生――吉岡さんの隣に座った男子高校生です。メガネをかけてかっちりとした印象の彼に、「貴方は?」と尋ねます。

「陣内大介。真帆路高校三年」
「万年二位だからね、陣内は」

 メガネの彼――陣内さんにそう告げたのは、またその隣、スクワードさんの前に座った男子高校生です。染めたような茶髪の彼に、陣内さんはきっと睨みました。

「あ、僕は万年三位の千葉大翔。秀英の三年なんだ」
「あれ? 万年が付くってことは君たちはいつもその順位なの?」

 そう首を傾げたスクワードさんに、千葉さんが頷きました。陣内さんはムッとしたように口を開きます。

「いっつも僅差だがな!」
「そうカッカしないでくださいよ、陣内先輩。あ、俺は桜丘高校二年、井上淳太です。近宮さんのファンです!」

 そう乗り出した彼に、苦笑いして握手に応じます。キラキラした視線は慣れてはいますが、握手にはあまり慣れていません。しかし、同世代のマジシャンは少ないので出会えて嬉しいですね。


 それからは流れ解散になりました。陣内さんはさっさと控え室に、スクワードさんはスタッフさんに呼ばれてリハーサルに、千葉さんと井上さんはそれを見学に向かいました。私は吉岡さんと話しながら控え室に向かいます。話の内容はもちろん「恋しよっ」について、です。とことん読み込んでいる彼女に、話を合わせるのは大変です。とりあえず、来ているはずの野崎くんにサインを頼んでおきます。5分もあれば準備ができるそうです。
 エレベーター前のロビーに着けば、野崎くん達がいました。ブンブンと手を振る遊さんに、私も手を振り返します。

「イケメンがいる……!」
「吉岡さん、一応あの子は女の子ですよ」
「え! 嘘! もったいない! 赤毛のほうも!?」
「赤毛は男です」

 そう言えばほっと息を吐いた彼女に、苦笑いします。赤毛の方はマミコのモデルと言う話はしないほうがいいでしょう。そのまま合流すれば千代さんと堀先輩、御子柴くんの視線が彼女の持つ鞄に注がれます。……やはり、「恋しよっ」の文字とあのマスコットキャラクターがめだちますね。

「近宮、頼まれてた奴、はい」
「ああ、それはそのまま吉岡さんに渡してください。彼女、『恋しよっ』の大ファンみたいなので」

 そう笑いながら告げれば、野崎くんの目が輝きました。ほかも反応します。

「『恋しよっ』のファンなんですか?」
「え? あ、うん」
「これを」

 そう渡した野崎くんに、彼女は首を傾げて中身を見ると、固まりました。遊さんがいるために、彼女に耳打ちをします。

「実はですね、私の友人が作者なんです」
「え!! じゃあ、これ、本物なの!?」

 そう驚いた彼女に、人差し指を唇に押し当ててから頷きます。ハッとした彼女は「あの中に?」と小さく尋ね、私はまた頷きました。吉岡さんはその場にいた全員を見て、千代さんを凝視します。……うん、そうですね。まさか男性が描いてるとは思いませんよね。あの中だと千代さんに思えますよね。まさかあの中のほとんどが関係者だとはわかりませんよね。……面白そうなので、放置しておきましょう。


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