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魔法使いの心配事
吉岡さんは先生に呼ばれて戻られました。千代さんに、応援してます! と握手した彼女を見送ります。首を傾げている周り、意味に気がついた野崎くんが追いかけていこうとしましたがそれを引き止めておきます。
「そう言えば、遥、調子はどう?」
「上々ですよ」
「楽しみだなぁ、遥さんのマジック!」
「ふふ、ありがとうございます。頑張りますね」
そう笑って彼らを見ます。そして、そっと目を伏せて――また開きました。不思議そうにした彼らに首を左右に振ってまた笑います。
「いえ、なにもありませんよ」
貴方達が、事件に巻き込まれないように、祈っていたなんて言えるわけがありません。
「あ、近宮さん!」
そうパタパタとはしってきたのは別の女性ADさんです。
「周りはお友達ですか?」
「はい」
「ちょうどよかったです! スタジオのセットの準備が完了したからもう案内できるんですよ。お友達は案内しますね!」
「ありがとうございます」
「じゃあ、また後でだな」
そう言った堀先輩に、頷きます。女性ADはもう一度口を開きました。
「そう言えば、山ノ内プロデューサーが貴方を呼んでたって聞きました」
「山ノ内さんが、ですか?」
「ええ、山ノ内プロデューサーの部屋に来て欲しいそうです」
「……わかりました、伺います。では、皆さんまた後で」
もう一度笑って、控え室に入ります。控え室に入れば、兄がいました。
「遥? どうしました?」
そう首を傾げた兄に、「いえ、なにもありません」首を左右に振ります。兄はこちらを見て、近づいてきました。
「遥」
不意に兄が私の目線にかがみました。
「遥、大丈夫だよ」
「……」
「君なら、大丈夫だ」
そう笑んだ兄は私が舞台に緊張しているのだと思っているのでしょう。しかし、それは違います。どんどん膨らむ嫌な予感に、押し潰されそうなのです。
「遥」
「なんですか?」
兄はもう一度私を呼びました。顔を上げれば兄は私を抱きしめます。
「遥、どんなことがあっても僕は遥の味方だ。そばにいる。だから、大丈夫」
その言葉に少しだけ動きを止めます。泣いてしまいたいですが、それはどうかと思います。この前の事件からすこし精神が弱くなっている気がします。そっと兄の体を離して笑いました。
「ありがとうございます。ちょっと元気になりました」
「もうちょっとこうしていてもいいんですよ?」
「そうはいきません、山ノ内さんに呼ばれてます」
「……一緒に行こうか?」
「すぐに終わりますよ」
そう肩を竦めて兄を見ます。兄は「気をつけて」と私の頭をクシャリと撫でました。
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