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かけられた呪いの分析




 少し考えて、懐からペンと紙を取り出します。

「状況を整理します。まず、私は女性スタッフに山ノ内さんの所に行くように言われました」
「女性スタッフ、か。金森さんかな?」
「名前は存じあげません。しかし、彼女は確かこう言っていました。山ノ内さんが呼んでいると『聞いた』」
「聞いたってことは人伝か?」
「恐らくは」
「遥の控室からあの部屋までは殆ど一直線だ」

 高宮さんが私のペンをとり、紙に図を描きます。

「途中、階段があるが、片方は曲がってすぐ屋上への扉があるし、片方は改装工事で入れない。それに、隠れる場所もない。そして、そのあとすぐにあの部屋がある」
「ええ。あの部屋には、扉が二つありますが、自由に開閉できるのは私が開けた扉だけです。もう片方はグラスのタワーが積まれていました。グラスタワーが動かせるなら別ですが、恐らくはそうではありません」
「密室ってことか?」
「ええ、恐らく犯人は最初から私を犯人に仕立てるつもりだったんでしょうね」
「犯人は……じゃあ、引き戻って屋上に逃げた?」
「いいや、あの扉は設計ミスがあって、屋上からしか鍵は開けれない。ちなみに、下は階段の板が外されているから通ることもできない。それは僕が確かめたから確かだ。隠れる場所がない。引き戻っても誰かしらに会うだろう」
「あのタワーを動かすトリックがありそうですね」
「あのタワーを動かした先には何があるんだ?」
「あの先は見取り図なら屋上につながる階段だったかな。だから、あのタワーをグラスを割らずに動かせた瞬間、このトリックは見破れる」
「……凶器はあの花瓶、なんだよな?」
「あの花瓶ですね、私は触れていませんし、犯人の指紋も恐らくは出てこないでしょう。マジシャンは手袋を持っている方が殆どですし、ここまで計画している人間がミスを犯しているとは考えにくいです。一番怪しいのは私の後から来た蘭堂さんでしょうか。私が花瓶を持ち上げていたならばともかく、脈などを確認している私を犯人に仕立て上げれるのは彼女だけです。彼女はすぐに悲鳴をあげて、私を犯人だと騒ぎ出しましたから」

 少し考えますが、現場にいるわけではありません。
 ……そう言えば、明智警視が来る前に事件が起こってしまいました。

「しばらく犯人を泳がせてみよう。何かボロを出すかもしれない」

 高宮さんはそう言って、また車のキーを持ちました。

「遥、堀くん、何かあれば右から二つ目のクローゼットに入ればいい。僕はちょっと別に調べるものがあるから出かける。このホテルのオーナーは僕に恩があるからね。大丈夫だとは思うけど」
「……わかりました、お気をつけて」

 どこに行くか、は聞かない方が無難でしょうし、オーナーに売りつけた恩も気にしない方がいいでしょう。そのまま高宮さんを見送ります。閉じた扉を見て、堀先輩が息を吐きました。

「あの人、何者なんだ?」
「私の兄です」
「は? 親戚じゃなくて?」

 首を傾げた堀先輩に、そう言えば彼は知らないことを思い出します、が、隠しても今更でしょうか。

「私のもう一人の兄ですよ、もっと詳しく言えば、犯罪者の方の」

 私の言葉に堀先輩が固まりました。うん、普通の反応でしょうか。そのままソファに深く沈んだ堀先輩は小さく「だからか……」と呟きます。何か思い当たる節があるんでしょうか。

「でも、近宮に関わってるとただの妹想いのお兄さんっぽいけどな」

 そうこちらを見て告げた堀先輩に、こちらは絵を見ながら言葉を返します。

「ああ見えて凶悪犯ですからお気をつけて。人は見かけによりませんよ」



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