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大切なことは早く伝えましょう




「おや? 重役出勤ですか? 明智警視」

 そう警察を引き連れてやってきた男――明智警視に告げた高遠は見るからに機嫌が悪い。と、いうよりも少しイライラとしているのだろうことが見て取れる。

「また貴方ですが、と言いたいですが――そうも言ってられませんね」

 慣れたように白い手袋を嵌めた彼はもう一組手袋を取り出すと高遠に渡す。それを見ていた鹿島が、ドラマみたいだね、と告げた。遺体はもう警察が持って行っている。床にはテープで人の形がかたどられていた。それは鹿島の言う通り、まるでドラマの撮影現場のようである。

「近宮さんが第一発見者ですね」
「ええ、状況的には。私と話す前に高宮に連れて行かれたのでなんとも言えませんが……」

 高遠の言葉に、明智は少し眉間にしわを寄せた。そして、「また貴方達兄弟は」と、なんとも言えない顔をする。高遠は見て見ぬ振りだ。

「恐らくですが、この事件の背後には霧島がいます」

 そう呟いた高遠に、明智は小さく頷く。

「近宮さんから話は伺っています。そちらの処理に時間が少々かかりました」
「遥から?」
「ええ、彼女は薄々感じていたようですよ」
「……だから、」
 だからあんなにも不安がっていたのか。

 高遠はそう目を閉じる。一瞬だ。一瞬だけ、高遠はあの瞬間、妹を疑った。と、いうのも高遠と遥は思考回路がとても似ている。年の功なのか、高遠の方が感情の振れ幅が狭いが遥だって同い年に比べれば感情の振れ幅が極端に少ない。事件が起き、自分に疑いが向いても平静でいるだろう、と高遠は思っていた。でも、実際は彼女は戸惑った。それは恐らく、自分や高宮ではあり得ないことで。だから、疑った。一瞬だけだが、恐らくそれは相手に伝わっている。
 ちらり、と高遠は後ろを見た。

「あの子達のおかげ、ですか」

 同い年の彼らがいたから、だろうか。自分と彼女の圧倒的な違いはそこにある。
 高遠の視線に気がついた佐倉が首を傾げる。

「高遠さん?」
「いいえ……暫く我慢してくださいね、皆さん。特に野崎くんは見てはいけない気がしますが、貴方達が事件に巻き込まれたら遥も私も困る」
「え」
「え? なんで野崎が困るの?」
「遥から色々聞いていますよ」

 ニコリと笑って高遠は周りを見渡した。そしてもう一度後ろを向いた。

「貴方達は遥が犯人だとは思っていないのですね」
「遥がそんなことするわけないじゃないですか! お兄さん」

 そう告げた鹿島に、御子柴が頷く。それに佐倉が同意した。

「遥さんはしません! 遥さんはどっちかというとマジックで人を幸せにするほうです!」
「そうだな。それに、近宮がするならもっと、こう、死因もわからないくらい複雑にする気がする」

 そう告げた野崎に周りは「野崎!」「野崎くん!」と叫んだが、高遠と明智は頷いた。

「的を得ていますね」
「誰かさんにそっくりですからね、彼女は……そういえば、今日は堀くんはいないんですね」
「ああ、彼なら高宮と遥を追いかけて行ったので遥と一緒でしょう」
「どこに行ったんです? 場合によってはマズイですよ」
 見せかけとはいえ、この辺りに非常線をはってますから。

 さらりと告げた明智に、高遠がもう一度息を吐く。

「そういうことは早く行ってください、明智警視!」



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