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スペード男爵はコーヒーがお好き?
第二現場につくと、明智警視と兄がいました。おや? と首をかしげた二人に、ニコリと笑っておきます。
「こんにちは、明智警視、高遠さん」
「……こんにちは、話は伺ってますよ」
そう返したのは兄でした。兄がいるのなら、猫をかぶらなくてもいいでしょう。
「自殺ですか? 他殺ですか?」
「他殺ですね。でもないと、あんなに自信満々に仕掛けに飛び込みませんよ」
「ああ、どなたかと思えば……」
明智警視の言葉に頷いておきます。明智警視は珍しく眉尻を下げました。
「遅れてしまって申し訳ありません」
「いえ、何かしてくださっていたんでしょう?」
「ええ、少々……火祀くんは先ほどぶりですね。先ほどはありがとうございました」
そう笑った明智警視に、火祀先輩は別に、とつぶやきました。ふむ、ここに来る前は明智警視と会っていたようです。てっきり、マジシャンと鉢合わせを狙ってあの場所にいたのかとおもっていましたが。
「高遠さん、明智警視、水筒はありましたか?」
「水筒?」
「魔法瓶タイプのそれですよ」
「……ああ、なるほど! そういうことでしたか! 流石ですよ! 丁度ここに一つそれはある。恐らく今回のマジックで使う予定だったのでしょう。予備は控え室でしょう」
これで最初の密室と犯人はわかりました。
そう告げた彼は仕掛けをみます。
「明智警視、違和感のわけがわかりました。やっぱり遥を局内にいるように言ったのは正解でしたよ」
「どういう意味です?」
「山ノ内さんは恐らく蘭堂さんに殺害されています」
明智警視の言葉に私が続けます。
「恐らく、二つの事件は同じ犯人の仕業ではありません。まだ確信はもてませんが」
「――山ノ内さんは蘭堂さんが殺害し、蘭堂さんは他の誰かに殺害された、ということですか」
明智警視の言葉に私達がうなずきます。そして、思考の海に入りかけた所で悲鳴がまた上がりました。野太いそれは恐らくは男性のものでしょう。そのまま明智警視や兄達と悲鳴の聞こえてきた場所に向かいます。場所はどうやら花森さんの控室らしいです。控室の前で顔を真っ青にした花森さんの付き人が腰を抜かしていました。私は後ろに続いた4人を足止めし、火祀先輩と堀先輩が中を見たらしいです。兄と明智警視、関係者も集まってきました。
「あの女が、近宮遥が殺したに違いない!」
そう喚いた付き人に、そんなわけ無いでしょうと思います。4人の視線が向きましたがしりません。遅れてやって来たスクワードさんも顔面を真っ青に染めています。とりあえず、現場保全のために明智警視は他の出演者――といっても、マジシャンは残りスクワードさんだけで、後は高校生ですが――に控室に戻るように促します。明智警視はちらりと付き人を見ました。
「どうされたんですか?」
「いつもどおり、花森さんがコーヒーを淹れていたんです。それを飲んだら急に……」
「見るからに毒殺ですね。なにかに毒が付着してるんでしょう」
サラリと告げた兄に、堀先輩が「あ」と言葉を零しました。その視線の先をたどると、コーヒー豆の紙袋が有ります。
「高遠さん、明智警視」
そう手招きして二人を呼びます。首を傾げた二人はこちらにやって来ました。
「コーヒー豆の紙袋の中から毒が検出されたら教えてください。皆と控室にいます」
ヒラリと手を振って他の皆の背中を押すように控室に戻ります。不思議そうに千代さんがこちらを見ました。
「赤尾さん?」
「――ふふふ、戻って作戦会議しましょう」
そういえば全員困惑したような表情を浮かべました。
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