先生がちょくちょく喫茶店に顔を出す用になった。そのたびに会話ができるので、少し嬉しかったりする。まるで昔に戻れたみたいだ、と思ったり。くしゃくしゃと頭をなでられることも増えた。明らかな子供扱いだけども、それが心地よかったりもするのだ。私が『先生の生徒』もしくは『自分になついている子供』であるかぎり、この関係は消えることはないから、安心する。
 住む世界が違うから、何時かはなくなるだろうそれではあるけども。苦しくはない。ただ、前のように好きという気持ちを封じていれば簡単にこの関係を続けていける。
 先生たちの曲を聞きながら、公園を歩く。大学には公園内を通るのが近い。遠くの方で何かの撮影をしているのか、きゃあきゃあと女性陣が騒いでいるのが聞こえる。そのなかに友人を見つけ、また、友人も私を見つけてよってきた。

「何、なんの撮影?」
「ドラマだよ。ほら、次の月九の」
「誰きてるの?」
「ドラマティックスターズ」

 そう言えば、この子はそのアイドルを押していたな、と思う。見なくていいのか、と尋ねれば、大学の抗議の出席日数がやばいから、とのことだ。泣く泣くその場を離れたその子に、苦笑いする。女性陣の声は大学付近まで聞こえていた。


 抗議が終わると、どうやらまだ撮影は続いていたらしい。
 きゃあきゃあと騒ぐ女性陣を尻目に、公園の池沿いを歩く。しかし、撮影班が移動したからか女性陣が自分の目の前に立ちふさがった。女性陣の背中の奥には、赤っぽい髪色と青い髪色、茶髪とも金髪とも取れない髪色の人が見える。その三人が恐らくドラマティックスターズなんだろう。あの後、友人の力説を聞いていれば彼らは先生たちと同じ事務所にいるのだという。先生の先輩に当たるわけだ。

「は?」

 不意に、目の前の女性が後ろに下がった。私は対応できるわけなく、そのままバランスを崩し池に真っ逆さまだ。ああ、別の道を通ればよかった、だとか、無視してすすめばよかった、だとかそういう考えが頭に流れるけども、時遅し、とはこのことだろう。
 バシャン!と言う音とともに、体が汚い水に沈み、そして、浮上し起き上がる。
 水面から顔を出せば、視線が向いていた。それを無視して池から這い上がり、ため息を付いて別の道に進む。視線が集まって恥ずかしいのと、コイツ自演じゃね?という視線が痛い。大学に戻れば、白衣なり一人暮らしの子に服を借りるなりできるはずである。
 まったく、ついてない。鞄の中の講義資料もぐちゃぐちゃだろうし、音楽プレイヤーも壊れただろう。救いはスマートフォンが防水なことか。

化学変化のきっかけ