しばらく歩いていれば、「おーい」と声が掛かる。周りに人はいない。ならば、恐らく私を呼びかけは私に対してだろう。後ろに振り返れば、そこには先程いた赤毛の男性がいた。手にはタオルを持っている。

「君、さっき池に落ちてたろ?大丈夫だったか?」
「はぁ、まぁ、なんとか。ありがとうございます」

 差し出されたタオルでふいては見るが、意味が無いだろう。見たところ、先生と年齢が近いような気がする。男性は私を見て、「タオルじゃ意味ないよな」といって、上着を脱いで私に渡した。

「えっと?」
「そのままじゃ風邪引くだろ?」
「近くに大学があるので、大丈夫です」
「それにしても風邪引くぜ。この温度でそのままじゃな。それに大学は次の撮影場所だから――」
「うわぁ、それは……」

 男性の言葉に顔をしかめてしまう。男性は私を見下ろし、首を傾げた。なんでもないです、といって男性を見る。

「このまま家に帰んで、やっぱりいいです」
「気にしなくていいから。大人の言葉は聞いたほうが得だぜ?」

 男性はそういって、私に上着を被せる。誰かの呼び声がして、男性は「じゃあな」とそちらに走っていった。のこされた私は呆然とそちらを見る。アイドルがアイドルと言われる所以を見た気がする。……いまいち先生と結びつかないけど。



 そのあと、家に帰りシャワーを浴びて服を着替え借りた上着とタオルをクリーニングに出した。かばんは捨てるしかなさそうであるし、中の講義資料も教授に言ってもらうか友達にもらうしかない。スマートフォンは問題なく起動し、安堵する。スマートフォンが壊れれば先生と連絡が取れなくなる。とりあえず、先生にメールを送る。ドラマティックスターズの赤毛の方について教えて下さい、と。