
エクシード ワールド-2-
「よーっす、ビビアンちゃん」
「あー? コウキさんか。レオたちも一緒じゃんって、その子は初めて見る顔だな」
「どうもー。お姉さん綺麗な髪色ですね、うらやま」
「あ、ありがとう。なんか面と向かって言われると照れるな」
さらりと店員の女性――ビビアンを口説いたオトハにザップは「コイツやり手だ……!」とレオナルドに告げる。レオナルドは「はいはい」と言葉を返した。
「で、オトハちゃんはハンバーガーでいいんだよな?」
「ん」
「飲み物は?」
「オレンジジュース」
「オレンジジュース!? ガキかよ!」
「炭酸飲めないんです、ほっといてください」
「オトハちゃん、銀猿のいうことなんか耳を貸さなくていいよ」
「んだとコラァ!」
「はいはい、落ち着けお前ら。食事の時間ぐらい仲良くしろ。ハンバーガーとポテト、オレンジジュース、サラダと、俺はハンバーガーと大ミートソーススパと大コーク」
「俺は大ハンバーガーと大ミートソーススパと大コーク」
「あ、僕もそれで」
「僕も同じものを」
「私はミートソーススパとコーク」
「はいよ」
ビビアンがオーダーをメモするのを見届けて、オトハはもう一度あたりを見渡してから隣にいるチェインと話し始める。コウキはそんなオトハを見て少し笑みを浮かべた。そんな様子に三人衆は顔を見合わせる。
そんなこんな出過ぎた時間、しばらくすればできた料理に、オトハは目を輝かせた。そして、一口食べようと口を開いた時、何かの音が聞こえてチェインがハンバーガーを持ったオトハを引っ張り、コウキがビビアンの方へ飛び移るとそのままカウンターの後ろになるように伏せ、ツェッドはレオナルドをカウンター越しに投げ込んでザップとともにカウンターに逃げ込んだ。
どどドドド、と鳴り響いた銃声の中、オトハはハンバーガーを頬張る。それを見て、チェインが「意外と肝が座ってるね」と告げた。ドカドカと入ってきた連中に、ザップが少し顔色を青くする。
「なに、もしかしてザップさん関係っすか?」
「そ、そんなことは」
「貴方関係なんですね」
呆れたようにそう言い放ったツェッドに、ザップは何か言おうと頭を働かせたが、それより先に来訪者が口を開いた。
「おい! ザップ! ここにいるのはわかってんだぞ!!」
「ご指名だぞ、ザップ。逝って来い」
「ちょ、アニさん!?」
笑顔で言い切ったコウキにザップが焦ったような顔をする。
「冗談だよ」
「いやいやいや、アニさんの冗談は冗談に聞こえねぇって!」
「まぁ、半分は本気だし」
スラリと答えたコウキは、どうすっかなぁっとため息を吐いた。できれば穏便に済ましたいところである。
「なに、そのザップさんって人、貴方達に何したの?」
聞こえてきた言葉に、コウキ他三人は固まった。レオナルドが立ち上がり様子をちらりと見れば、オトハが別の席に座ってハンバーガーをモグモグと咀嚼しているのがわかる。チェインは焦ったようにしているが、オトハは関係なさそうに来訪者――オトハからすればクリーチャーを見つめた。
「ああん? なんだ、ガキ」
「いや、社会的な勉強? 凄い起こってるみたいだから、そのザップさんって人が何したんだろうっていう純粋な興味」
トントン、とオトハが机を叩く。一定のリズムではなく不規則だが繰り返してるのがわかる。クリーチャー――正しくは異界人がオトハを見下ろす。
「肝が座ってやがるな」
「そうかな。怖いものはちゃんとあるよ。で、何したの」
「俺の女を寝とったあげく、金を返さねぇ!」
「うわぁ」
あからさまにオトハの引いた声が聞こえる。カウンター裏では視線が一気にザップに向いた。
「なにそれ最悪。うちの上司も似たようなことすけど、金借りないだけマシだった。これじゃあ慰めようもない。金に利子上乗せしようぜ。トイチあたりで」
「トイチ?」
「10日で1割の利子。期限過ぎてるんでしょ? 利息あげてやれ」
「お前は鬼かっ! って、あ゛」
オトハの言葉に顔を出したザップにコウキは頭を抱えた。周りも呆れた目をザップに向ける。
「……彼が例のザップさん?」
「おうよ。やっとみつけだぜぇ? 嬢ちゃんは下がってな」
「はぁい」
そう言ってオトハはチェインの手を引き、料理を持って安全そうな端の席に移動し、何かの機械を机の上においた。細長いそれに、チェインが首を傾げる。オトハがボタンを押せば起動したようで、オトハはまたハンバーガーを頬張った。席の外側では、戦闘がおこってるのだが破片が当たることはない。ハンバーガーを食べ終わったオトハがジュース片手に喧嘩の観察をする。ひとしきり終わった所でオトハが機械のボタンをもう一度叩くと、レオナルドに恨めしげに睨まれた。店内はひどい有様である。
「これもザップさんが弁償かぁ」
「クソざるのせいだから仕方ないよ」
「テメェら……」
「逃げないからじゃん。私ちゃんと裏口から逃げたら?っていったよ」
「モールス信号をこの人が気づくと思います?」
「そう思ったんだけど、ハズレだったみたい」
肩を竦めたオトハは、小切手を取り出してスラスラと文字を書いた。そしてソレをビビアンに渡す。
「え?」
「荒らしちゃったから、これで直せばいいと思う」
「悪いよ、こんな」
「じゃあ、ハンバーガーが美味しかったからそのチップだと思っといて」
ヒラヒラと手を振ったオトハに、コウキとレオナルド、ザップが覗き込み固まる。
そこからの行動は早かった。
コウキはオトハを担ぐと、「こいつ町中にいたらめっちゃ危ないじゃねぇか!」と騒ぎチェインもレオナルドも同調する。そんな中オトハが悠長に会計を、といったが、オトハのその行為と食べ物がごっちゃになったのでなしになったらしい。飛ぶように帰っていく面々を見て、なんだったんだ、とビビアンがボヤいた。