
エクシード ワールド-4-
ひと通りの騒ぎを見届けると、「そういえば」とレオナルドはコウキを見る。
「コウキさんってオトハをすごい気にかけてますよね。なんかあるんですか?」
「え?」
レオナルドの問にきょとんとしたコウキは止まった。
「俺、そんなにオトハちゃんを気にかけてた?」
「ああ、物凄く。クラウスが世話を焼かないくらいには」
スティーブンの言葉に、コウキは視線を彷徨わせてからため息を付いた。
「そんなにわかりやすい?」
「僕達からすればかなり」
レオナルドの言葉に、あー、おー、と言葉にならない言葉を吐いてコウキは頭を抱える。
「どうかしたのかね? コウキ」
クラウスの言葉にコウキはまた「あー……」と歯切れの悪い言葉を吐いた。そして、頭を掻き、何かを決心したかのようにクラウスを見たがまたソファに深く沈んだ。そんな様子に周りは首を傾げるばかりである。初めて見る様子だからだ。
「アニさん、まさか、アイツに惚れた!?」
「んなわけねーだろ、妹に惚れる奴がいるか」
詰め寄ったザップに、コウキは足蹴を食らわせた。顔面に綺麗に入った為、ザップの顔にはくっきりと靴の跡が付いている。
「いもう、と?」
そう固まったクラウスとスティーブン、チェインに、コウキはなんとも言えないような顔をした。レオナルドもザップも驚いたような顔をする。ツェッドだけが、「ああ、あの誕生日会の」と理解を示したようだが、その後に首を傾げた。
「でも、オトハさんは異世界出身ですよね」
「あー、おう」
ハヤテはどう説明しようかあぐねているようだった。そして、もう一度深くため息を付く。
「俺のファミリーネームって名乗ったことあったっけ?」
「いや。君は我々に合った時からファーストネームしか名乗らなかった」
クラウスの言葉に、コウキは「あーやっぱりな」とだけ口にした。
「俺のファミリーネームはサクライ。所謂アメリカ生まれの日本人だ」
「偶然か? 彼女が君の妹である証拠は?」
「いや、偶然じゃないと思う」
「オトハくんは何故キミを見て、兄だと気づかない?」
「忘れてる、のかねぇ。十年前のことだし、死んでると思われてる可能性もあるな。妹である証拠は、アイツの持ってた機械なんだけど。俺、俺の親父がアレを持ってたの見たことあんだよ。で、俺もあの機械でこっちに飛ばされたんだと思う」
そう告げたコウキは何かを思い出すようだ。
「何故オトハ君は君を死んだと?」
「十一年前のアイツの誕生日のことだ。俺と俺の両親は血界の眷属に襲われた」
「血界の眷属にだって?」
「そ、ガキだったし、戦い方とか知らねぇ俺は命を落とすか落とさないかの瀬戸際で、父さんが起動させたあの装置でこの世界にきて――師匠に拾われた。ずっと俺は父親の能力かなんかでテレポートして森の中だと思ってたけど違ったらしいな」
ぼんやりと告げたコウキは、「最初に気づいたのは」と口を開く。
「アイツが落とした社員証に、俺の妹の名前が書いていたから、まさかと思った。髪も同じ色の黒。でも、そんな人間なら探せばゴマンといる。けど、アイツは俺の知っている機械を持っていた。俺が覚えている妹の動作を無意識にやってみせた」
「でも、それだけじゃ妹とは言い切れないんじゃないか?」
「ああ、だから様子を見てる。でも、無意識に世話を焼いちまうみたいだな」
ドアをノックする音がして、全員がそちらを見る。ガチャリと扉を開けてやって来たのはオトハだ。周りの雰囲気に首を傾げて「何かあったんですか?」と告げた彼女にクラウスがなにか言いかけて、スティーブンがソレを制止し「いや、なにも」と告げた。そうですか、とだけ答えたオトハに「どうかしたのか?」とコウキが尋ねる。
「ええ、ネットワークがつながるかどうかのテストをしたいので、やっていいかなぁ、と」
「ネットワーク? 機械ができたのか?」
「とりあえず、回線を一時的につなげるだけです。装置に関しての詳しい論文は、アッチにありますし。この部屋でやったほうがいいだろうって」
「それもそうだな」
「マーク43をはこぶの、手伝ってもらっていいですか? 多分、ネットワークがつながればジャーヴィス起動すると思うんで」
「ずっと思ってたけど、ジャーヴィスってなんなんだ?」
「ああ、人工知能です。私の社長の話し相手でもある」
シレッと告げたオトハに、周りは目を見合わせた。手伝おう、と告げたクラウスとコウキにオトハはありがとうございます、と告げた。