エクシード ワールド-5-


 大きな人型ロボット――オトハがマーク43と呼ぶパワードスーツをクラウスが運び、コウキがオトハのつくった機械を持ってくる。コウキがソレをテーブルに置くと、オトハが何かをセッティングし始めた。作業をするオトハは周りの視線に、「どうかしましたか?」と尋ねる。

「いや、オトハくん、こっちの世界に来て3日になるわけだが、君の家族は心配してないのか?」
「家族みたいな上司は心配してる気がしますね。あー、皮肉をいっぱい聞かなきゃいけないのか。なにそれ面倒」

 クラウスの問に、オトハがおもいっきり顔をしかめる。

「家族みたいな上司、ということは、家族はいないのか?」

 上手いな、とレオナルドは思う。スティーブンは自然にそう聞いてみせた。オトハは「あー……」とことばにならない声を発して目を泳がせた。

「私の家族、皆、殺されてて」
「殺された?」
「ええ、私の9歳の誕生日に。それから誕生日が嫌いだったんですが、今回のことで余計に嫌いになりました」

 手を止めていた作業を再開して、オトハはそう答える。

「家族全員が?」
「――はっきり言って、よく覚えてないんです。警察の見解では私の家族は死んでることになっていました。死体の損傷も激しかったみたいです。覚えてることといえば――家族の死体が散らかった風景と、笑ってる犯人の男ぐらいでしょうか」
「君が犯人の顔を覚えていたなら、逮捕も早かったんじゃないか?」
「逮捕されてませんよ。無能なんです、警察は。三日前、誰に私が襲われたと思います? その男ですよ」
「オトハ?」
「――いえ、すいません。もうちょっとで繋がりそうです」

 そう苦笑いしたオトハに、レオナルドが口を開いた。

「じゃあ、もし、オトハの家族が生きてたらどうする?」
「家族が?」
「そう、一人だけでもいいから、きょうだいとか」
「兄弟、そういえば、兄の死体は見つかってません」
「え、じゃあ、生きてる可能性あるじゃん」
「いえ。無能な警察の見解では、致死量の血痕があったとか。最初は生きてるんじゃないかって待ってたんですが。持つだけ無駄な希望は捨てました。上司が情報を探ってくれましたが、全くヒットしませんでしたし」
「――それは」
「それに、幼いころなら兎に角、今、『生きてました』と出てこられても困る」

 オトハの言葉に、コウキがぴくりと動きを止める。どうして、と尋ねたクラウスにオトハは口を開いた。

「今までの私の人生を全部否定することになるから。努力も、知識も、なにもかも」
「――でも、」
「その言いようじゃ、君は復讐するために力をつけたようだけど」
「そうですよ。無能な警察の代わりに、犯人を捕まえよう、懲らしめようと思って当時は軍事会社だったスターク・インダストリーズに無理やり入ったんです。まぁ、情けない話、当の本人にあっても、恐怖で体が動かなかったんですが。――でも、どうしてそんなことを?」

 首を傾げたオトハに、周りがどう答えようかあぐねていると、不意にマーク43の目が青く光った。

「――オトハ様」

 そう言葉を発したマーク43にオトハは目を輝かせて「ジャーヴィス!」と叫ぶ。

「ネットワークが繋がった!」
「オトハ様、ここは――彼らは――」
「それはちょっとややこしい。トニーさんは?」
「トニー様はS.H.I.E.L.D.に赴いています。貴方と貴方を襲った存在のことで」
「ペッパーさんは?」
「無事です」
「よかった」

 そう息を吐いたオトハは「私のスマートフォンをS.H.I.E.L.D.にいるトニーさんに繋げれる?」と尋ねる。ええ、と答えたソレの目のライトは消えた。オトハはスマートフォンをとりだし、その画面をホログラムの巨大ラップトップへとつなぐ。ラップトップにはCALLという画面が出て、コール音が続いた後、画面が切り替わった。画面の先はどこかの部屋の中だ。司令室のようなそこに、スティーブンが「これはすごいな」と言葉を口にした。映画を見てる気分、とは、レオナルドの言葉である。

「オトハ!」

 そんな画面のなかに写った男に、わっと、オトハは耳をふさいだ。

「オトハ! 三日間も何処にいたんだ!! というか、今も何処にいるんだ!」
「わ、わぁ、ちょっと、落ち着こう、」
「落ち着いてる! 何処にいるかをさっさと言え!」
「あーうー、ちょっと、ね。説明すると長くなるから、フューリーさんとか呼んでよ。キャップでも可」
「僕だけじゃだめだと?」
「あー、……うーん、二回説明するのが面倒だからアレだったけど……まぁ、極論から言うとアレが作動しまして、異世界なうです」
「成功おめでとう、だが、頭のネジは外れたようだ」

 呆れたように告げた男――トニー・スタークにオトハは「やっぱそういう認識になりますよねぇ」とため息を付いた。

「ったく、お前は行方不明。お前とペッパーを襲った存在は変な奴だし、こっちがどれ位たいへんかわかってないだろ」
「ゴメンナサイ。って、変なやつ?」
「ああ。お前を襲った存在だが、スターク・タワーの監視カメラに一切写ってないんだ。おまけに、キャップは見えているがアイアンマンをまとった僕にはさっぱり見えなかった。だからS.H.I.E.L.D.も動くことになった」
「なるほど――ですって、クラウスさん、スティーブさん」
 ちなみにアイアンマンはコレね。

 アスカがそう言ってマーク43を小突くと、クラウスとスティーブンが頷いた。

「何だ、誰がいるのか?」
「私を助けてくれた人たち。トニーさん、ちょっと今から――って、ソーがいる! なんで!」

 画面の端に写った人影に、アスカは目を輝かせた。ひょこり、と顔を出したソーは「オトハ?」と首を傾げる。

「そう! オトハだよ!」
「オトハ! 無事なのか!」
「なんでソーがいるの!?」
「弟の戯れ言に付き合って降りてきたら、本当にお前がいなくなっていたんだと」
「ロキの?」
「ロキがお前がこの世界からいなくなったぞ、私の二の舞いにならなければいいなといったらしい」
「おい、」

 スタークの言葉に、金髪の男が顔をしかめる。他にも何か事情がありそうだ、とオトハはソーを見た。

「ソー、吸血鬼って知ってる?」
「吸血鬼?」
「アスガルド周辺にいる?」
「いや。ダークエルフなどはいるが、そんな種族は存在しない」

 首を振ったオトハはなるほど、と頷き、もう一度クラウス達を見る。

「彼は?」
「えっと、神様。雷のね。こっちでいうと、異界のなんだっけ、王様いるじゃん。ソレのいい人番みたいな感じ」

 オトハの言葉に、「偏執王や堕落王のことですかね」とツェッドが声を出した。

「で、オトハは結局何処に誰といるんだ」
「だから、異世界の元ニューヨーク・現ヘルサレムズ・ロッドですって」

 オトハの言葉に、画面の端に写っていた存在もなんだなんだと寄ってくる。全員オトハの見知った顔である。眼帯をつけた男が来るのを確認すると、オトハは口を開いた。


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