
ハロー ニューヨーク-4-
イライラ。イライラ。
コウキは何処かそんな表情でヘリキャリアのラボから見える空を見下ろしている。そんなコウキをオトハの位置を特定しながらスタークは、透明のラップトップ越しに見る。そして幾分か頭を回転させた後、コウキに向かって声をかけた。
「妹が心配か?」
「あたりまえだろ」
すぐにそう答えたコウキに、スタークは「やはりな」と思う。バッとコウキを見た周りに、コウキは自分がどんな問に返答したかを気づきため息を付いた。
「性格悪いな、スタークさん」
「僕が性格が悪い? 完璧だろ」
そう戯けたスタークは肩を竦めた。ここにオトハがいれば「誰が完璧だって?」とつっこむが残念ながらここにオトハはいない。近くにいたブラック・ヴィドウがコウキを見る。
「コウキが、オトハの兄? オトハの兄は死んでるはずよ」
「――S.H.I.E.L.D.はオトハがあのワープ装置を研究していることをしらなかったんだな」
「ええ」
「あの装置は、オトハの父親が残していた論文を元に創りだしたものだ」
「オトハの父親の?」
「ああ。そこから多数仮定していけば、オトハが兄貴だということはわかる。第一に、名前がコウキでアジア系。第二に、オトハの兄の死体は見つかっていない。死亡したと考えたのは致死量の血痕があったから。まぁ、ここまでは事実で、次からが仮定だ」
スタークはそう告げて、また画面を触りだす。
「二人の父親が、オトハの9歳の誕生日までに装置を完成させていて、コウキはそれでそちらの世界に逃げた。そう考えれば、それならコチラでいくら情報を探しても出てこなかった理由もわかる」
スタークの言葉に、周りの視線はコウキへと向いた。
「――そのとおりだ。俺は、あの時、父さんに逃がされた。でも、違う世界だなんて思ってもなかった。どこかにいるはずの妹を守りたくて強くなったのに、このザマだよな」
そう自嘲したコウキに、ソーが優しい笑みを浮かべて首を振った。
「まだ間に合う。オトハは死んではいない」
「――そうだ、コウキ。オトハくんはまだ死んではいない。君が守るべき人は助けを求めてる」
クラウスの言葉に、コウキはまた窓の外へ目を写した。
「まぁ、問題はオトハがコウキを死んでると思ってるところがあるからな。その考えを捻じ曲げるのに時間がかかる。全くあの頑固は誰に似たんだか」
「間違いなくスタークさんだとおもいますよ」
誰も突っ込まない言葉を突っ込んだのはツェッドである。ソレを聞いてバナー博士が一瞬肩を震わせた。が、すぐに真顔に戻る。画面に現れた光に、バナー博士はスタークを見た。
「スターク、エネルギー反応が現れた」
「どこからだ?」
「また君のタワーからだ」
その言葉に、スタークは思いっきり顔をしかめた。そして全ての画面を切り替え、スタークタワーの方へとつなげる。
「ロックが外されてる。恐らくオトハのパスで侵入したんだ」
「タワーに入って何するつもり?」
「大型のワープ装置がある。オトハのあの機械をはめれば作動するソレだ」
「キャップ! クラウス!」
入ってきたフューリーに周りは視線を向けた。
「ニューヨークに屍喰いが大量発生してる」
「なんだって?」
スタークがまた画面を切り替えた。次に写ったのはニューヨークの街だ。兵士の格好をした死体が動き回っているのがわかる。
「――兵士、ですか?」
「ああ、いろんな国籍の奴らがいるぞ――これなんかゲリラの兵士だ」
「! スタークさん」
何かを思いついたように、コウキがスタークを見る。
「戦場だ。おそらく、吸血鬼もあの男も戦場で死体を集めたに違いない」
「戦場?」
「傭兵組織ね。しかも、これは最近活動を活発にしたゲリラの兵士だわ」
「最近戦場へ行った傭兵組織――しかも功績を上げてる奴を洗えば、大本に辿り着くかもしれない」
「ジャーヴィス、検索をかけろ」
「――いや、その必要はないみたいだ」
キャップがある一点を見つめて指をさす。
「この男だけが屍喰いに襲われていない」
画面の中では男が悠々と街を歩いているのが見える。無線で連絡を取り合っているのを見ると、誰かの仲間であることは間違いなさそうだ。そこに、ふわり、と黒い何かが現れ――ソレをつかむとまた画面から消えた。そして、今度は別の画面――スタークタワーにその男と吸血鬼が現れる。オトハは白衣の男に押さえつけられているのがわかった。
「なんでああいう奴らは僕のタワーに登りたがるんだ」
「それは、ほら、いうだろ。馬鹿と煙は高いところに登りたがるって」
ホークアイの言葉に、ソーがなんとも言えない顔をしたのはしかたがないだろう。