エスケープ フロム エマージェンシー-7-


 ドン!と落とされてきたソレにレオナルドは目を見開いた。ハルクがハミデフを落としたらしい。諱を読み取ろうとするが、なかなか長い。ハルクがハミデフをバンバンと地面に叩きつけているのを見て、レオナルドは苦笑いをした。

「こえー……」
「だが、すぐに回復している」

 クラウスの言う通り、ハミデフはすぐに回復し、今度はハミデフがハルクをビルに突き飛ばした。クラウスが武器をつけてにらみ、攻撃しようとした瞬間、すぐそばまで来ていたらしい屍喰いが襲いかかってくる。が、それは飛んできた盾によって吹っ飛ばされた。そちらを見れば、ツェッドとロジャースがいるのが見える。ハミデフは影に潜り、消えた。レオナルドはタワーを見上げる。

「屋上です!」

 その声に、落下していたソーはハルクに向かってコウキを投げる。コウキは通りかかったスタークがキャッチし、そのまま屋上へ行ったソーにコウキは苦笑いをした。そのまま降ろされたコウキは、キャップへと目を向ける。

「アイツは影と血を使って攻撃してくる。つーことで、影を消して無力化する」
「影を?」
「ソーとコウキが此処に雷を落とす。その光を使って、だ」

 コウキの言葉にスタークが注釈を入れる。

「え、なら、上にいるブラックウィドウさん達があぶなくないですか!?」
「大丈夫だろ」
「でたよ! コウキさんのたまにでる楽観視!」
「自信があるからそう言えるんだろう」
「ミスター・スターク。何がいる?」

 クラウスの言葉に、スタークは指をさした。そこにあったのは、ビルである。正しくは、ビルの窓ガラス――景色を映す鏡に似たソレだった。


「別の場所に誘導させよう」
「誘導?」
「闘いながら誘導するしかない。もしくは、」

 キャップは上を見上げる。

「彼の裏にいる人物をそこに連れて行く」
「コウキを助け出せるし、一石二鳥だ。俺がソイツを連れて行こう」
「場所は? ガラスはどこに集めるんです?」
「そうだな――タイムスクエアの広場だ」
「決まりだ。あそこには街灯がある。避雷針になる」
「ホークアイ、ブラックウィドウ聞こえたか?」

 キャップの言葉に、ホークアイが「ああ」と答える。ブラックウィドウからの返答はない。

「じゃあ、俺は先にそこへ行って雑魚を倒しとく」
「僕も手伝います」
「じゃあ、先に行ってるぜ、お魚クン」
「お魚クンって……貴方は鷹のくせに」

 ツェッドはそうぼやいてから、ぐるりと周りを見渡す。レオナルドはハッとした。

「ツェッドさん、場所わからないんじゃ」
「私が案内しよう。まだニューヨークの場所を覚えてる」

 クラウスはそう言って、タイムスクエアの方へ走り出す。

「ハルク、コウキ、アレを集めてくれ。スターク、ソーと共にタイムスクエアで会おう」
「ああ」

 スタークはそう返事をするとタワーの屋上へ上昇する。タワーの屋上では、ソーとブラックウィドウが押さえつけられているように見えた。が、スタークには何に押さえつけられているのかは見えない。チラリ、とスタークがオトハを探す。オトハは小太りな男に押さえつけられていた。

「ジャーヴィス、アイツが誰なのか探れ」
「わかりました、サー」

 とりあえず、スタークは付近にリパルサーを撃つ。こちらに向いた視線、その瞬間にソーが手を前に突き出した。ムジョルニアがソーの手に収まる。スタークはガッと小太りな男を後ろから引っ張ると、そのまま宙に浮かんだ。

「何をする!」
「ちょっと来てもらうぞ」
「ハミデフ!」

 男の声に、ハミデフが動いた。グルンと影でオトハを掴むと、そのままスタークに襲いかかってくる。ひ、と告げた男に、スタークは舌打ちをした。見えない相手にどこまで時間が持つか。

「オトハは余計だが――まぁ、作戦通りだ。キャップ! 釣れたぞ!」
「まだ少しかかる」
「おいおい、見えない相手と鬼ごっこしろと!?」

スタークはそう告げてグン、とスピードを上げてニューヨークを進む。見えないのなら、攻撃のしようもない。ソーが何かに突っ込むのを見て、スタークが「オトハがいるんだぞ!」と怒る。

「スターク様、情報が出ました」
「なんだって?」
「傭兵・軍事企業であるハンニガル社の社長――サングリア氏です。スターク・インダストリーズとも商品や人事の件で取引の記録が。貴方は断っていますが」

 スタークはチラリと男――サングリアを見下ろした。そして、通りで見たことがあると思った、とぼやく。普段は覚えていないようなそれだが、取引に対しサングリアはやけにしつこかったことを覚えている。

 いきなりグン、と足を引っ張られたのを感じてスタークは顔をしかめる。恐らくは何かに掴まれた。何か、とは決まってる。ハミデフに、だ。出力をあげるが、男がいるせいで動かない。

「ブレングリード流血闘術 02式 散弾式連突」

 そんな声と共に飛んできた十字架に、スタークは足が軽くなるのを感じた。下を見ればクラウスがいるのがわかる。

「スタークさん! 準備ができた!」
「なら連れて行く! だが、予想外のアクシデントだ。吸血鬼はオトハがお気に入りらしい」
「――まさか」
「そのまさかだ。吸血鬼はオトハを抱えたまま飛行中だ」

 スタークはそう告げて進行方向をタイムスクエアに向けた。サングリアが自分にしがみつき、「ハミデフ!」とわめくのが聞こえる。後ろからは破壊音が聞こえた。ソーとクラウスが吸血鬼を攻撃しているらしい。
 スタークがタイムスクエアにつくと、そこは鏡ばりになっていた。短時間によくできたものだな、と、スタークは感心し、中心辺りにサングリアを落とす。程なくしてソーに叩き落とされるようなかたち現れたハミデフに、レオナルドが目を細めた。諱はあと半分だ。

「まだだ――」

 コウキはそう告げて顔をしかめる。
 ゆらり、と起き上がったハミデフは頭を抱え始めた。

「う、ぁあ、」
「ハミデフ! しっかりしろ!」

呻くような声に、影が暴走する。クラウスはレオナルドを連れてハミデフから距離をとった。


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