エスケープ フロム エマージェンシー-9-


「はい、コウキ」
「コウキ! 空間が広がってきている!」

 スティーブンの言葉に、コウキは目を見開いてタワーをみる。後ろからは戦闘音だ。何かが嗅ぎつけたらしい。

「どうしたんだ? コウキ」
「他の連中が、空間を嗅ぎつけた!」
「空間、あ、」

 コウキの言葉に、オトハが目を見開く。そして、スタークを見た。

「スタークさん! あの大きな装置を止めないと!」
「作動してたのか!?」
「あの男が作動させろって!」

 オトハは今何時、とレオナルドに尋ねる。レオナルドが告げた時間に、オトハは顔をしかめてスタークにへばりついた。

「ラボに連れてって!」
「文句を言いたいが、今回は仕方がない」
「何が起こる?」
「こっちで簡単に言えば、ロキがやったこと! あっちで簡単に言えば、大崩落!! あと、15分程度で!!」

 オトハの言葉に全員の顔色が変わる。スタークがオトハを連れて宙へと飛んでいく。ぱりん、と窓ガラスを割れば、オトハは唖然とした。ワープホール越しに、スティーブンと氷が見えたからだ。

「スティーブンさん!」
「オトハ? どうにかならないのか、これは!」
「どうにかします! じゃないと、こっちで大崩落!!」

 オトハはそう言ってホログラムラップトップを起動させる。隣でアーマーを外したスタークが近くにあったホログラムを起動させた。

「ジャーヴィス! 機械へのコンタクトを試みろ! ったく、オトハ、何が何でもキーのつけすぎじゃないか?」
「そうでもしないと、誰かさんが触るじゃないですか!」

 そう告げてオトハは画面に文字を打ち込む。

「オトハ!」
「スティーブンさん、見る余裕が無い!」
「――おい、オトハ、早く閉じろ」

 スタークが顔をいくらか青ざめさせてワープホールを見た。何かが手をコチラに伸ばしているのがわかる。オトハはそれを見て、ぎょっとすると、またキーを叩き始めた。そして、画面が急に動き始める。恐らくジャーヴィスがオトハのパソコンのサーバとつながり、オトハのデータを元に打ち込んでいるらしい。それを確認すると、オトハは装置の近くにより――なにかレバーに手をかけた。

「この腕なくなっちゃうけどいいよね!」
「自業自得だ、やってしまえ」
「自業自得だ、早く閉じろ」

 スタークとスティーブンの声に、オトハがレバーを下げる。ぐん、と体重をかけて下げるが、それは中々下がらない。見かねたスタークが後ろに回り込み、レバーを下げようとする。

「なん、っで、さが、らないの、」
「おそらく、ワープホールの、ちからの、関係だろう、だから、僕はボタンにしろ、と、」
「――何をしてるんですか!」

 その言葉に二人はラボの入口を見る。ジャーヴィスがエレベーターを復旧させたらしい。ツェッドやコウキ達が来ていた。

「手伝って、このバーを下げないと、このホールは、塞がない、」
「そういうことか!」

 コウキがスタークのもう横側からレバーを引く。顔を歪めたコウキにクラウスが加わり、ソーが加わった。徐々に下に降りていくレバーと共に、ワープホールが小さくなっていくのがわかる。ガクン、と下までレバーが下がれば、手のようなものがオトハのラボに転がった。空間が閉じてしまったため、腕が切断されたらしい。オトハはヘナヘナとスタークにもたれかかった。

「――死ぬかと思ったし、もうワープホールの研究とか、絶対やらない」

 そうボヤいたオトハに、周りは顔を見合わせる。キャップが苦笑いしてそれを見た。

「なんとか、危機は免れたか」
「ああ、」

 コウキはそう言ってオトハの頭を撫でる。ピタリ、と固まったオトハに、スタークが「オトハの内心はともかく、ほかは一件落着だな」と肩をすくめていってみせた。


30