
ウィッシング ユー-1-
「――で、しっかり打ち上げに観光までして帰ってきたと」
そう笑顔で告げたスティーブンに、レオナルドとツェッドが幾分か顔を青ざめて固まる。クラウスが「正確にはオトハくんの誕生日会だった」と告げれば、スティーブンは大きくため息を付いた。
「こっちは大変だったんだぞ。君たちがいない間」
「う……す、すいません」
「謝罪は求めてないんだよなぁ」
「アンタ、そんなことをウジウジウジウジいうから腹黒男なのよ」
K.K.がレオナルドのカメラを触りながら答えた。チェインとソニックもそれを興味深そうに覗きこんでいる。懐かしいわぁ、と時々こぼす言葉に、スティーブンは三人をもう一度見る。
「で、血界の眷属の狙いは何だった?」
「それが、だ。スティーブン。血界の眷属が唯の人類に付き従っていた」
「唯の人類に?」
「ええ。むこうに滞在したのも、コウキさんやスタークさん、S.H.I.E.L.D.による調査結果を待っていたからなんですが――コレが調査結果です」
そう言ってツェッドが紙をスティーブンへ渡す。その紙を呼んでスティーブンは顔をしかめた。
「薬で操っていたというのか?」
「正式に言うと、麻薬のようなものです」
「血界の眷属に薬は効かないはずだろう」
スティーブンの言葉に、ツェッドが言葉を紡ぐ。
「オトハさんとバナー博士、スタークさん曰く、アレは血界の眷属の血液に極度のガンマ線を何度も加えて人の血を混ぜたものだと」
「――なんだって?」
「簡単にいえば、血清らしいです。あのキャプテンアメリカの超人血清と似たような感じらしいっす」
「……薬が毒になった、ということか?」
「ああ、おそらくは。コチラと向こうでは科学の発展の仕方が違う。その何処かの仮定でうまれたんだろう」
クラウスの言葉に、スティーブンは納得したようなしていないような顔をした。そして、あたりに目を向ける。もう一人、帰ってくるはずの人間がいない。
「コウキはどうしたんだ?」
「ああ、コウキさんなら――」
口を開いたレオナルドの言葉を横切るように、バンっと扉が開く音が聞こえる。誰かが足で蹴りあげたらしい。山積みの本で顔は見えないが履いているズボンが特徴的なのですぐに誰か察しはついた。
「ただいまっと。ザップ、それここ置いとけ」
「アニさん、の、鬼畜」
「そんなこと言う奴にはチップはなしだ」
「アニさん最高っす」
ころりと態度を変えたザップに、コウキはふん、と鼻を鳴らす。そして、自分に視線が集まっているのを見て「なんだ」と首を傾げた。
「――いや、君が戻ってこなかったかと思って」
「誰が?」
「コウキっちよ。兄妹だってバレたオトハっちは、あっちの世界でしょ?」
K.Kの言葉に、コウキは、ああ、それな、と告げる。
「迷った。5分ぐらい。でも、どうあがいても、俺の居場所はこっちだろ」
そう自信満々に告げたコウキに、どこか安心したようにスティーブンは息をつく。
「よかったよ。コウキがいなくなれば戦力が大幅ダウンだ」
「駒としか思ってないくせによく言うぜスティーヴィー。まぁ、スタークさんに背を押されたっつーか、なんというか。キャップ達にヒーローやらないかって誘われたけど、ヒーローは向いてないしな」
牙狩りとか、異界人と戦ってるほうが楽だわ。
コウキは肩をすくめてみせる。チェインは山積みにされた本を一冊手にとった。
「コミックだ」
「そうだ、気づいたんだよ。俺」
「――何に、と聞きたいが、爆弾発言が出そうだからいい」
「あら、いいじゃない。爆弾発言。何に気づいたの?」
「アイアンマンシリーズ集めれば、オトハの幼少期から今まで、これからも辿れるんじゃねって」
コウキの言葉に、クラウス以外の全員が苦笑いをした。