
ウィッシング ユー-3-
ぐたり、とソファに持たれながらコウキぼんやりとコミックを眺める。コミックにはオトハがいて、コミックの中のオトハはスタークと仲睦まじそうだ。
――僕は、君に話しておかなければいけないことがある。
オトハの誕生パーティー中だ。酔いつぶれた周りと、同じく酔いつぶれてプレゼントに埋もれているようなオトハ。外の空気を吸おうと、テラスへと出た時だ。そう、スタークに声をかけられたのは。
「なに?」
「オトハのことだ」
「嫁にくださいとかじゃないよな」
「当たらずとも遠からず、というところだな」
そう告げてスタークはシャンパンをコウキに渡す。スタークの言葉に、コウキは驚きながらもそれを受け取る。
「――オトハのファミリーネームは。今、正しくは、『サクライ』じゃない」
「なんだって?」
「スタークだ。オトハ=スターク。9年前、僕が養子に加えた」
スタークの言葉に、コウキは固まった。スタークはシャンパンに口をつけた。
「本人も嫌がってな、だから社員証から何までサクライ姓にしてある。本人もスタークとはなのらないだろう」
「――ああ」
「あの吸血鬼に復讐すること。それが、オトハが僕に出した『家族になる』条件だ。それはもうクリアした。が、今度はオトハの本物の兄が現れた。こうなるとアイツはこういうだろう。兄がいるからサクライ姓をすてないと」
「――」
「オトハを僕の娘にくれないか」
スタークがまっすぐハヤテを見る。コウキもまっすぐにスタークを見る。真意を探るように。
「僕は十年間、ずっとオトハの父親をしてきた。決して良いとはいえないが、与えるものは与えてきたつもりだ。――僕には家族がいない。これから作る可能性もある、だが、これまで、オトハは僕の娘だった。そして、これからも、君が許すなら、親子でいたい」
コウキはスタークから目線をそらし、ニューヨークの街を見る。
――11年だ。
コウキは11年間、この世界にはいなかった。森のなかで師匠に拾われてから、修行に明け暮れたし、それからはクラウスやスティーブと一緒に牙狩りをしたりしていた。そんな中起こった大崩落のあと、コウキはライブラに属し、今に至る。その間、オトハはずっとスタークといたのだ。
10年。自分と、オトハが過ごした時間より長い。スタークがオトハを大事にしていたことはわかる。そして、この世界に自分の居場所などないことも。
「おにい、ちゃん、すたあくさん、なにしてるの、」
「――アスカ」
そんな言葉を吐いて、千鳥足でやって来たオトハは案の定コウキではなくスタークに抱きついた。キャップがプレゼントしたテディベアに、レオナルドが即席で作りプレゼントしたパーティーハットをかぶっている。
「ふたりでなにおはなししてたんですかぁ」
「なんでもいいだろう」
「ぺっぱーさんに、すたあくさんがだんしょくかだっていっちゃお」
「おい、そんなことを言ってみろ。お前が恋人を連れてきたアカツキには片っ端からいやがらせしてやる」
「ろきでも?」
「ロキは論外だ」
コウキを置いて、会話はポンポンと弾む。コウキは、ソレにゆっくりと目をつぶった。スタークはコウキを見て、口を開く。
「今すぐに答えを求めているわけじゃないんだ。答えは後でいい」
「こくはくの?」
「そんなわけがないだろう。中へ入るぞ、冷える」
スタークはオトハを連れて、テラスから中へと通じる扉を開けた。オトハがコウキの方を振り向く。
「おにいちゃんは、はいらないの?」