
バット イエット ザ ワールド ムーブス-2-
その日、ハミデフは見かけない子供を見つけた。見上げてくる瞳は、今にも泣きそうで情けない顔をしている。
はて、とハミデフは頭を回転させる。この研究所の出入りは限られているらしい。子供となると、恐らく研究所に両親がいるかどうか、だが、家族を入られるのは己が知っている中ではキミヒロだけである。もう一度ハミデフが子供を見下ろす。子供はビクリと肩を揺らして、ついにはワンワンと泣き出した。それを聞いたらしい、何処からか少年が現れるとご丁寧にハミデフを睨んで子供を抱き上げた。そしそのまま曲がり角に消えた少年に、ハミデフはゆっくりと後を追う。見つけた後ろ姿に、キミヒロ、と声をかければ、少年がハミデフを指差した。
「コイツ! オトハを泣かしたの!」
「ハミデフが? ああ、確かに彼の顔は怖いよなぁ。眼光鋭いし、科学に反した力量持ってるのに加減下手だし」
「おい」
散々な言い草である。ハミデフが低い声でそう告げれば、キミヒロでも少年でもなく小さな子供が肩をはねさせて、またワンワンと泣き出した。
「あぁ、ほら、また、泣いた」
「オトハに近寄んな! このデカブツ!」
睨みつける少年にため息をつき、キミヒロを見る。キミヒロは子供を抱き上げると、ぽん、と少年の頭に手を置いた。
「すっかり敵認識されたな」
「お前のせいでな」
「君の眼光のせいだろ。こっちが息子のコウキ。で、こっちが娘のオトハ。クラリスが仕事だってんで、こっちに来たんだ。コウキ、オトハ、コイツはお父さんのオトモダチ。こわくないこわくない」
「む」
その言葉に、少年――コウキと子供――オトハはジッとハミデフを見る。ハミデフが、ニコリ、と怖い笑顔を見せてオトハを泣かし、コウキに丸めた新聞紙で殴られるのは時間の問題だった。