
バット イエット ザ ワールド ムーブス-3-
「人の時間ははやいな」
五年の月日が経った頃である。ぼんやりとハミデフがそうキミヒロにこぼした。今更なんだよ、と告げたキミヒロはハミデフと外見的な年齢は変わらなくなった。何時しかそれは逆転し、キミヒロは死んでいくのだろう。そう思いながら、ハミデフはコウキから貰ったカードを眺める。
誕生日会に来てね!と子供の文字で書かれているソレにハミデフは差出人を見る。オトハ・サクライと書かれたソレに、キミヒロは酒に口をつける。
「今年は来れそう?」
「お前の所の社長次第だろう」
「ほんっと、きみって社長のお気に入りだね」
そうこぼしたキミヒロに、ハミデフは「お前もだろう」と告げる。キミヒロは首を振った。
「正しくは、お気に入り『だった』。過去形だよ。今の僕は彼のお気に入りじゃない」
「何かしたのか?」
「ワープ技術の提出を渋ってる。あれはまだ僕らみたいな人間が持っちゃダメなものだよ」
ワープ技術、それはキミヒロが研究していたそれである。ハミデフが知識を与えたのも加わり、それは完成した。しかし、キミヒロは提出を渋っているらしい。
「僕は君の知識を持って完成させた」
「ああ」
「でも、人類だけの知識じゃ、まだ無理だ」
「そうだな。……たったそれだけの理由で拒絶か?」
「あと、使い道だよ。僕はアレを平和的なことに使って欲しい。でも、社長は軍事的なことに使う気だよ。君の武力が大好きなのもそれでだ」
酒を煽り、ぼんやりと外を見つめたキミヒロに、ハミデフは確かにそうだろう、と思う。キミヒロを介し知り合ったが、事件――正確には研究所襲撃事件をハミデフが一人で納めてから、社長はハミデフがお気に入りで、何処ぞの戦場に出さしては、これもキミヒロやオトハの為だと言う。それを信じたが、違うらしい。キミヒロはそれを望んでいない。そろそろアレから手を引くのもアリか、とハミデフが考えれば、キミヒロが口を開く。
「僕、この会社やめようと思ってる。後は決まってるよ。スターク・インダストリーズで働く。ハミデフもよければどう?」
「俺に働けと?」
「いいじゃん、どうせ暇なんだろ。社長と関わらないきっかけができるし、オトハの誕生日会にくるきっかけができる。毎年毎年大変なんだぞ、ハミデフさんは、ハミデフさんは、って」
むぅ、と顔をしかめたキミヒロに、ハミデフはふっと笑った。
「そうだな、そうしようか」
「決まりだ」
コチン、とキミヒロはハミデフのグラスと自分のグラスにぶつける。そして2人で笑って酒を飲み干した。