
バット イエット ザ ワールド ムーブス-4-
それからははやかったと言える。キミヒロは社長に辞表を突きつけ、それが却下されたが、キミヒロは「もう提出しちゃったし」と研究所の片付けを始める。研究員もとめたが、キミヒロは頑なにやめると言い張っていた。ハミデフさんも何か言ってください、と研究員達は言うが、かれこれいう口をハミデフは持っていない。キミヒロがいないのならば、ハミデフがいる理由にもならないからだ。
その日は、今度はハミデフがあの社長に向かってもう辞めると告げる日だった。無理矢理また戦場にだそうとするソレに嫌気がさしていた頃である。ラッピングされたテディベアを持って、ハミデフは社長の元へ訪れる。
「ハミデフ、きてくれたか――」
「俺はもう辞める」
ハミデフの言葉に、クイっと眉を吊り上げた社長に、ハミデフは言葉を続けた。
「俺はアンタの使いっぱなしではないし、俺はキミヒロがいたからここにいただけだ。キミヒロがいなくなるのなら、俺もいなくなる」
ハミデフの言葉に、周りにいた社長のボディーガード達が動いた。ハミデフは顔をしかめて、社長を見る。
「俺とやりあうつもりか?」
ハミデフの足元の影が波打ち始める。一瞬周りは怯んだが、かかれ!という社長の声に周りにいたボディーガード達が一斉にハミデフに銃口を向け――銃を撃った。ハミデフがそれを飛び上がって避け、波打つ影を凶器――巨大な針へと変える。グサリとボディーガード達の体に刺さったソレ。あるボディーガードは絶命し、あるボディーガードはあまりの痛さに叫びをあげる。
ハミデフは肩を竦めて周りを見る。そして、じゃあな、と告げてその場を後にした。社長であるサングリアは口をぽかんと開けたままの情けない表情でハミデフを見ていた。
ちらりと時計を見れば、午後の3時を回っている。参加をするならば手伝えとキミヒロに言われていたことを思い出し、ハミデフは苦笑いを浮かべ、会社の施設をでる。その時だ。ドン、と誰かにぶつかったのは。
「失礼、」
そう謝った男に、ハミデフも言葉を返そうとしたが、体に違和感が走った。下を見れば、注射器のようなものが落ちている。
「なにを、した?」
はじめて味わう感覚に、ハミデフは戸惑った。目を見開いたまま男にそう言ったが、男はなにも言わないまま立ち去る。グラリ、と体が傾き、ハミデフは膝をついた。もっていたテディベアが地面を転がる。呼吸が荒い。目の前が霞む。朦朧としだした意識に、ハミデフは床に倒れる。
――意識が、持たない。
ハミデフの意識は暗闇に戻った。