バット イエット ザ ワールド ムーブス-5-


 意識が戻った、というよりは、夢見心地である。血の匂いが薄らする。周りには死体のようなものが転がっていた。

 ――夢、なんだろうか。

 叫び声が聞こえて、ハミデフはそちらを見る。涙を目にためて恐怖に顔を染めた子供に、ハミデフはゆっくりと近づいた。

 ――そういえば、誕生日会に行く予定だった。
 ――なにが、あったんだったか。

 ハミデフは回らない思考のまま、子供に向かって口を開く。

「誕生日おめでとう、オトハ」

 その一言に、子供はとうとう逃げ出した。途中、何かにつまづいた子供を、助け起こさなければ、と近づこうとする。

「だれか! 助けて!!」

 ――俺が今助けてやる。
 ――キミヒロはどこにいるんだ。夢の中でも一番に助け出しそうだが。

「だれか!!」

 そう喚いた子供の声に反応したのか、外からだれかが子供に呼びかける声が聞こえる。
 子供に近づこうとしていた足が止まり、割れるような頭痛に、ハミデフはまた意識を朦朧とさした。

 ――また世界が暗転する。

 ――暗い。



 次にハミデフが目がさめると、何事もなかったかのように自分が借りていたアパートの一室にいた。電子の時計の日付は、自分が覚えているよりも進んでいる。首を傾げたハミデフは、少し考えた。誰かにぶつかった。その誰かがおそらく、自分に何かをしたんだろう。

「キミヒロに聞けばわかるか」

 何かプロジェクトが進んでいれば、キミヒロの元に情報が行くはずである。そう思い、また、誕生日会に出れなかったことを詫びなければならないと、ハミデフはキミヒロの家に向かう。
 いつもの道を抜けて、いつもの通りを曲がる。見えてきたそこは、黄色のテープが貼られていた。これは、と首を傾げたハミデフに、近くを通った人が口を開く。

「おや、ハミデフさん、出張から帰ってきてたの」

 出張、とハミデフは言葉を繰り返す。出張していた気もするし、違う気もする。

「――ええ」
「帰ってきたら、ビックリだっただろう。まさか、こんなことになるなんて」
「え?」
「まさか、ニュースをまだ見ていないのか? サクライさん家、一ヶ月前に――」


 その言葉に、ハミデフは目を見開いて、走った。近くにあったデリに駆け込み、古い新聞を貰う。そこにはデカデカと一家惨殺と書いてある。

 ――キミヒロ・サクライ氏の家に強盗が入り、一家を惨殺。警察が捜査を続けているが、まだ犯人の手かがりはない。

 ハミデフの頭が真っ白になった。そして、頭の隅でこう思う。
 ――ああ、また、一人になってしまった、と。


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