
アンハッピー ミゼアブル デイ-3-
「なんでオトハがそんな状態で帰って来るんだ。ウチのオトハになにしたんだ、ジイさん」
「博物館に行ってからこうなんだ。寝不足だと言っていたけども、違う気がする」
オトハを抱き上げた状態でスタークタワーやってきたロジャースに、スタークは顔を思いっきりしかめる。近くまで歩いていたのだが、緊張感が途切れたらしいオトハが途中でうずくまり泣きだしてしまい、ロジャースがいわゆるお姫様抱っこをして連れて帰ってきた。ロジャースはオトハをソファに寝かせれば、飾り付けされた部屋が目に入る。どうやらパーティーの準備は順調に進んでいたようだ。
「で、なんでこうなった? 博物館にヤバイ展示でもあったか?」
「いや、子供のオモチャの展示だったよ」
「尚更なんでそうなるんだ」
トニーがオトハを見下ろす。怯えた子猫のような姿にスタークはオトハの昔を思い出した。
「ジャーヴィス、何かわかることは?」
「トニー様、本日はオトハ様にとって別の意味でも特別なのはご存知なのでは?」
何処からともなく聞こえてきた声は、J.A.R.V.I.S.(ジャーヴィス)の声だ。スタークが作り上げた最新鋭の人工知能である。
「ご存知もなにも、そのトラウマを脱却させようとこっちは必死だ」
スタークの言葉に、ロジャースとその場にいた女性――ペッパーは首をかしげた。スタークとジャーヴィスの会話はまだ続く。
「過去がフラッシュバックしたか?」
「その可能性はあります。現に本日の二時頃、急に心拍数が跳ね上がっています」
「二時頃」
スタークは時計を見る。今の時間が15時30分を過ぎたところだ。
「僕がジュースを買いにオトハのそばを離れた時だ。その後、元いた場所にオトハがいなくて探したが――何かから逃げてるようだった」
「周りに変な奴はいなかったか?」
「いや? ああ、でも、一瞬、博物館から出るときにオトハが小さく悲鳴を零したよ」
「それだ」
そう言って体を起こしたスタークは、空中にラップトップを出した。ホログラム式のそれである。
「でも、怪しいとは言えない。オトハを見つめてた女性は家族連れだった」
ロジャースの言葉に、スタークが「女性?」と首を傾げる。
「ああ、オトハを見ていたのは女性だ。子どもと、旦那っぽい男がいた。彼女がどうかしたのか?」
「おかしいな。オトハの仇は男のはずなんだが。ジャーヴィス、その時間の博物館、オトハの行動を映したの監視カメラの映像を探れ」
「了解致しました、サー」
ジャーヴィスの返答を聞くと、スタークはオトハを見下ろした。誰に似たのかいつも態度だけは無駄にでかいというのに、今日は小さく見える。これは誕生日会どころじゃなさそうだ、と息を吐いた。