イッツ ビヨンド エクスペクタティオン-2-


 ソファに寝る少女を周りは見つめていた。
 首元の赤黒い跡は少女が首を絞められた証でもある。何かに追われていたのか、ここに侵入したのかは少女が目覚めるまでわからないだろう。
 パワードスーツの方も動かない。スティーブンとチェインがどこの会社のものかを特定しようとするが該当するものはないようである。そして、少女の資料もない。髪の色や肌の色から、おそらく人類のアジア系だろうことは推測できる。

「ん、」
「あ、起きたみたいですよ!」

  小さく身じろぎした少女に近くにいたレオナルドが声を上げた。コウキがレオナルドの手を引き、少女から距離をとらせる。少女はゆっくりと目を開けた。

「ここ、は?」

  少女はあたりをぼんやりと見つめる。それから、ハッとしたように起き上がり、周りを見た。何かを警戒したように、ソファの裏に回る。

「目が覚めたようで、よかった」
「こないで!」

  綺麗な訛りのない英語だ。アジア系でも、おそらく英語圏で育ったことがうかがえる。

「はぁ!? なんだぁ!? その口の利き方! 落ちてきたのはそっちだろ!」
「ザップ」

  少女は今なお警戒したようにジリジリと後ろに下がる。トン、と誰かにぶつかり少女は肩をはねさせた。そこにいたのは黒髪の女性――チェインである。少女は手を振り払うと、視界に入った物の近くに逃げた。まるで威嚇する子猫だな、とレオナルドは思う。

「とにーさん、ここ、どこ?」

  少女がロボットに呼びかけるが、ロボットは反応しない。それに少女は今度は「ジャーヴィス?」と違う名前を呼びかけた。それでもやはり反応しないそれ。少女は泣きそうに顔を歪めた。クラウスが近づけば、少女の表情は恐怖に染まっていく。

「なーんか、勘違いしてるみてェ」

 そう呟いたコウキに、レオナルドはコウキを見た。落ちてきた時はあんなにも怒っていたというのに、今はもう落ち着いているらしい。こういう時はやっぱ小動物だよなぁ、と告げたコウキはヒョイっとレオナルドの肩にいた白い動物――音速猿のソニックを摘み上げると、行ってこい、と軽く投げる。着地したソニックは不服そうにしたが、すぐに視界から消えた。

「う、わ!」

 いきなり現れたそれに少女はかなり驚いたらしい。肩をびくりとはねさせて、ソニックを見た。

「なにこれ、猿? おもちゃ、?」

 少女にじゃれついた猿に、少女はまたきょとん、とする。そして、もう一度あたりを見て、周りにいる人を見て、パワードスーツを見て、ポケットから携帯と何かを取り出したところで少女はため息をついた。何かを話そうと少女が前を見るが、クラウスにまたぐにゃりと顔を歪めた。

「すまない、怖がらせるつもりはなかった」

  焦ったように告げたクラウスに、スティーブンがため息をつき、クラウスの隣に並んだ。ニコリ、と笑ったそれに、少女はおずおずと言葉を口にする。

「……勝手に入り込んでしまってごめんなさい、あの、ここってどこなんでしょうか?」

 不安げに、迷子の子供のようにそう告げた少女に、クラウスはきょとんとし、スティーブンは顔をしかめた。

「詳しく話を聞いたほうがよさそうだな」
「ああ、そうしよう。ギルベルト、お茶の用意を」


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